「新型コロナウイルス感染拡大による、
暮らしや心の変化および旅行再開に向けての意識調査(2020)」

2020/05/28

株式会社JTB

旅行意向は高いものの、旅行再開は慎重に。国内は夏休みと9月の連休時期、海外は秋以降に行きたい
「すぐ行きたい」の割合が高いのは、「知人訪問」、「自然が多い」、「帰省」、「居住都道府県内の旅行」
国内旅行に「早く行きたい」と考えているのは、男女29才以下の若者。性別では男性が高い
女性60才以上は、旅行意向はあるが、どの旅行も「しばらく行きたくない」が他より高い
旅行の再開には、新型コロナ自体の解決を待つ気持ちが強い。「治療薬やワクチンが完成し効果が出る(45.6%)」、「全国の緊急事態宣言の解除(43.8%)」、「WHOの終息宣言(33.9%)」
マスク着用・消毒などの衛生管理、3密回避は8割が継続したいと考え、旅行先でも重視される
旅行の計画を阻む理由は感染症への不安以外に、「世間体が悪い」、「旅行先の情報が少ない」が増加
外出自粛で考え方が変化したと感じた1位は「対面や直接のコミュニケーションは大切だ(29.8%)」
若い人ほどリアルなコミュニケーションを大切と感じる割合が高いが、同時に、会議やショッピングなどはオンラインで十分と考える割合も高い。デジタルを前提としたリアルの体験価値向上が重要になる
自粛期間に多く利用されたサービスは「月額制の動画、漫画、書籍等の見放題・読み放題(53.3%)」や「デリバリーサービス(38.9%)」
「月額制の動画、漫画、書籍等の見放題・読み放題」は継続意向も75.2%と高い


 株式会社JTB(東京都品川区 代表取締役社長執行役員 髙橋広行)および株式会社JTB総合研究所(東京都港区 代表取締役社長執行役員 野澤肇)は、「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化および旅行再開に向けての意識調査(2020)」の調査結果を共同でまとめました。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19/以下新型コロナ)は、2019年12月末に中国武漢市で、「原因不明のウイルス性肺炎」として初めて発症事例が報告され、翌2020年1月15日に日本国内で最初の感染者の報告がありました。その後、世界中に感染が広がり、日本国内でも緊急事態宣言が発令され、外出や店舗営業の自粛、渡航制限など、過去に経験したことのない生活を送ることとなりました。
 本レポートは、両社の2つの調査に基づき、2月の感染拡大から緊急事態宣言の発令、解除の見通しが立つまでの間の人々の意識や行動の変化、旅行意向を追いながら、今後の足元の旅行回復の動きと、未来の旅行・観光のあり方への影響について旅行者の側から探っていきます。

【調査概要】
※各アンケート実施時の社会状況や感染者数の推移については、調査結果の後に掲載

【調査結果】

<全国の緊急事態宣言下の暮らしや意識全般について(JTB調査)>

 全国に緊急事態宣言が発令され、外出自粛や店舗の営業自粛が続いた状況下での、人々の暮らしや意識全般について、全国2万人の15才~79才の人に対して聞きました(性年齢は人口構成比に合わせて抽出)。


1.「新型コロナの影響で給与が減りそうだ」は就業者全体の31.2%。女性3040代が特に高い
  「新型コロナの影響で会社の業績が落ちている」は就業者全体の29.5%
  「いつもより生活費を節約している」は全体で33.3%、女性3040代が高い。
  「特に節約していない」は男女共に
60才以上が高い。働く世代の方が、シニア層より家計への影響を感じている

 最初に調査時点(4月末)での暮らしや景況感を聞きました。就業者に働き方を聞いたところ、「毎日職場に通勤している」割合は就業者全体の42.4%でしたが、男性30代~50代、女性40代・50代が45%以上と比較的高い傾向でした。テレワークに関しては、「毎日実施している」は8.9%、「曜日を決めて実施している」は12.1%あり、いずれも男性20代~50代に多い傾向でした。「新型コロナの影響で給与が減りそうだ」は全体で31.2%ですが、女性30代・40代が平均より高い結果となりました。また、「新型コロナの影響で会社の業績が落ちている」は29.5%でした(図1)。

 家計や消費への影響については年代による違いがはっきりと表れました。「いつもより生活費を節約している」は、全体で、33.3%で、特に女性30代・40代が38.6%と高くなりました。逆に「特に生活費は節約していない」は全体で24.0%でしたが、男女60才以上は36.6%、39.7%と他の年代より大幅に高い結果となりました。一方、若くなるほど、趣味や娯楽のための出費は控えるものの、「在宅生活を快適に過ごすために(嗜好品、本、ゲームなど)お金を使うようになった」が多い結果となりました(図2)。新型コロナの感染拡大が始まり、緊急事態宣言の見通しが立つまでの約4か月、家計への影響を感じたのは働く世代と言えるでしょう。

(図1)新型コロナによる働き方への影響(複数回答)

(図2)新型コロナによる、家計や消費への影響(複数回答)


2.外出自粛や渡航制限の解除で、やりたいこと上位3つは、「国内旅行」、「外食」、「友人知人に会う」
  過去1年間の旅行経験者は、1位「国内旅行(53.3%)」。未経験者は「国内旅行」より「買い物」

 次に、外出自粛要請や渡航制限が解除され、自由に外出や旅行ができるようになったら、何をまずやりたいか、上位3つを選んでもらいました。結果は「国内旅行(40.9%)」、「外食(40.5%)」、「友人知人に会う(39.1%)」の順でいずれも小差でした。これを過去1年間に1回以上、国内外の旅行を経験した人、しない人とで比較したところ、「国内旅行」は経験者が53.3%、未経験者は20.8%と大きな差があることが分かりました。全体的には、過去1年間の旅行経験者の方が、「旅行」、「友人知人に会う」、「離れている家族に会う(帰省含む)」、「パーティーや飲み会など集まりに参加する」など、交流が期待できる「コト」への意向が高い傾向があるようです。一方、過去1年間の旅行未経験者は、「デパートや店舗での買い物」や「特にない」が、経験者より高い結果となりました(図3)。

(図3)外出自粛や渡航制限が解除になったらやりたいこと(上位3つを合算)(複数回答)


3.新型コロナ感染拡大の前後で、考え方が変化したと感じることは、
 「対面や直接のコミュニケーションは大切だ(29.8%)」が最も高く、若い年代の割合がより高い
 「働く場所にはこだわらなくてよい(18.0%)」は、男性30代は27.9%、男性29才以下は26.5%
 「自分の考え方に変化はない(29.9%)」は、上の年代かつ男性の方が高く、男性60才以上で39.4%

 新型コロナによる外出自粛は、人々の生活スタイルを一変することになりました。多くの店舗や施設が営業自粛になる一方で、学校休校に伴うオンライン授業や、テレワークなどデジタルツールの活用が、急速に普及したことも注目されました。このような状況は、人々にどんな心の変化をもたらしたのでしょうか。新型コロナ前と今を比較して、自分の考え方がどんな点で変化したと感じているか、選択肢から選んでもらいました。
 全体で最も多かったのは「対面や直接のコミュニケーションは大切だ(29.8%)」で、「外出自粛が長引き、国内旅行をしたいという意識が以前より高まった(23.2%)」が続きました。1位の「対面や直接のコミュニケーションは大切だ」は若いほど多く、女性29才以下は40.4%、男性29才以下も男性の中では最高の31.7%ありました。一方で、若い世代は、ネットショッピングやオンライン会議、オンラインセミナーなどデジタルで済むことも多いと感じている割合が上の年代より高いことも分かりました。
 旅行に関しては、女性29才以下は、国内旅行、海外旅行ともに、「旅行に行きたい気持ちが高まった」が全体平均より10ポイント以上高くなりました。対照的に、女性60才以上は国内旅行、海外旅行ともに「外出自粛が長引き、旅行に対する関心が薄れた」が他より高い結果となりました。
 働き方に関しては、「働く場所にはこだわらなくてよい」は全体では18.0%でしたが、男性40代以下の年代と女性29才以下が比較的高い結果となり(男性:29才以下26.5%、30代27.9%、40代24.7%、女性:29才以下20.5%)、前述のテレワークの多い年代と重なります。
 「自分の考え方に変化はない」と答えた人は、全体で29.9%。これには、社会やデジタルの進化により変化を既に感じていた人もいれば、新型コロナでも生活が大きく変わらず、感じる機会がなかったという人もいると考えられます。傾向としては、年代が上がるほど「変化がない」と答える人が多く、男性に高い傾向が見られました(男性50代37.0%、男性60才以上39.4%)(図4)。

(図4)新型コロナ影響前と比較した、自分の考え方の変化(複数回答)


<過去1年間の旅行経験者の旅行再開の考え方について(JTB調査)>

前項までのアンケート対象者2万人のうち、過去1年間に国内外の旅行(出張は除き、帰省は含む)を1回以上経験した人を2,060人抽出し、今後の旅行について聞きました。


4.旅行を再開するきっかけは、「治療薬やワクチンが完成し効果が出る(45.6%)」、
 「全国の緊急事態宣言が解除になる(43.8%)」「周囲からとがめられなくなったら(26.8%)」
 「自治体が来訪自粛要請をやめたら(23.0%)」

 どのような状況になったら旅行や外出を再開するかを聞いたところ、「治療薬やワクチンが完成し効果が出る(45.6%)」、「全国の緊急事態宣言が解除になる(43.8%)」、「WHOが全世界の新型コロナの終息宣言をしたら(33.9%)」が上位でした。新型コロナの感染拡大が収まり、治療や感染防止のしくみがワクチンの開発などで確立すること、全国の緊急事態宣言の解除が待たれているようです。女性はワクチンの開発やWHOの終息宣言と答える割合が高く、男性は、全国や居住地の緊急事態宣言の解除が高い傾向でした。
 また、「周囲からとがめられなくなったら(26.8%)」、「自治体が来訪自粛要請をやめたら(23.0%)」については、前者は比較的女性の割合が高く、後者は男性が高い傾向でした。「周囲の人が旅行を始めたら(7.8%)」は全体平均では高くはありませんが、若い世代は平均より5ポイントほど高い結果となりました。このように周囲や旅行先の意向を気にする割合も決して低くはない結果となりました。
 「国際線、国内線の航空機の運航や鉄道の運行本数が正常に戻ったら(13.8%)」、「ふっこう割など旅行に行くための支援が始まったら(12.9%)」は他より低く、現状ではまだ新型コロナ自体の影響が大きいようです。従来の災害からの観光復興の手法だけではない取り組みの重要性が読み取れます(図5)。

(図5) どのような状況になれば旅行や外出をするか(複数回答)


5.「すぐ行きたい」の割合が高いのは、「知人訪問」、「自然が多い」、「帰省」、「居住都道府県内の旅行」
  「しばらく行きたくない」は「大都市圏への旅行」が55.5%、「海外旅行」は48.1%      

 次に、外出自粛や渡航制限の解除後、「すぐ行きたい」と考える旅行や外出とは何か、旅行の種別ごとに心境を聞きました。全体的には「すぐ行きたい」はどの旅行も割合は高くなく、少し時間をおいてからと考えている人が多いようです。「すぐ行きたい」の割合が高いのは、上位から「友人・知人訪問(24.4%)」、「自然が多い地域への旅行(19.3%)」、「帰省(18.0%)」、「居住している都道府県内の旅行(15.7%)」でした。「少し時間がたってから行きたい」は「(長距離移動を含む)国内旅行(57.8%)」、「人が少ない地方都市への旅行(53.8%)」、「自然が多い地域への旅行(53.4%)」、でした。「しばらく行きたくない」は「大都市圏への旅行(55.5%)」、「海外旅行(48.1%)」でした(図6)。
 性年代別では、「すぐ行きたい」は「帰省」や「友人・知人訪問」を除くと、どちらかというと男性の割合が高く、また男女とも29才以下が高い結果でした。国内旅行の「すぐ行きたい(14.8%)」は、男女29才以下がそれぞれ23.0%、19.5%でした。一方、女性60才以上の海外旅行は、「二度といきたくない(8.1%)」が14.6%で、全体的に若い女性が旅行に意欲的なのに対して、女性60才以上はすぐ旅行することには慎重な傾向がみられました(図7)。
 今後1年間の旅行支出は、「支出を増やしたい」が9.6%と昨年から14.5ポイントも大幅に減少し、「支出を減らしたい」は34.3%と16.2ポイント増加しました(表1)。グラフは省略しましたが、性年代別で比較すると、今年は男女29才以下が、「支出を増やしたい」、「支出は同程度で回数を増やしたい」が、高い結果となりました。ここでも若者の旅行意欲の高さが現れました。

(図6)渡航や外出自粛が緩和された場合、どんな旅行にいつ頃行きたい気分か(単数回答)

(図7)国内旅行/海外旅行にいつ頃行きたいか(単数回答)


(表1)今後1年くらいの旅行支出について(単一回答)


<感染拡大から現在までの旅行に対する意識の変化と年内の旅行について(JTB総合研究所調査)>
 ここからは、新型コロナの感染が広がり、緊急事態宣言が発令されてから解除の見通しが立つまでの約4か月間の旅行に対する意識の変化や2020年中の旅行意向の変化について、2月から5月までの毎月の定点調査結果に沿い述べていきます。


6.2020年中の旅行意向は、緊急事態宣言が発令された4月以降に大きく減少
 まず、無作為に抽出した全国の20才以上の男女6,500人前後を対象に、2020年中の旅行(観光・レジャーや出張などの目的は問わず)の予定について聞きました。結果は「2020年中の旅行を予定・検討している」の合計が、2月調査(48.1%)と3月調査(44.1%)では微減となりましたが、緊急事態宣言が発令された後の4月調査では31.9%と10ポイント以上減少し、5月調査は前月と同程度(32.2%)となりました。特に「国内旅行を予定・検討している」の割合は、2月調査(35.2%)から5月調査(23.7%)の間で大きく減少しました。事態の深刻さが増すと共に、外出や移動を控える意識が高まったことと、外出自粛が長引き、先の見通しが立たない中で、旅行の計画をたてることができない様子がうかがえます(図8)。

(図8)2020年中の旅行の予定(2~5月調査)(単一回答)


7.国内旅行の出発時期は、78月の夏休み時期や910月の意向が高い
  行き先は「まずは自分の住んでいる地方から」の動きがみられる
 以降は、前項のアンケート対象者6,500人前後のうち、「2020年中に国内・海外旅行のいずれか、または両方を予定・検討している」と回答した1,000人前後に、予定する旅行の具体的な内容などについて聞きました。まずは、国内旅行の時期や行き先についてみていきます。
 国内旅行の時期については、2月・3月調査では「4~5月(GWなど)」が最も高く(2月:35.5%、3月:34.4%)、4月調査は「7~8月(夏休みなど)(32.1%)」、5月調査では「9~10月(シルバーウィークなど)(34.4%)」が最も高くなりました。新型コロナの影響が長引くことで、旅行の時期も夏以降に後ろ倒しになっていく様子がわかります(図9)。一方、各県が6月以降、段階的に県外からの来訪者受け入れ開始の発表をしており、今後、消費喚起プロモーションの展開も予想されることから、夏休み期間の旅行意向が高まるかもしれません。
 旅行の行き先は、4月調査では関東や関西など都市圏が減少し、北海道や東北などの地方部が増加しましたが、5月調査では都市圏が再び増加しました(図10)。また、居住地別に5月の調査結果をみると、旅行先を居住地と同じ地方とする比率が高く、「まずは自分の住んでいる地方で旅行をする」という意向が高いことが分かりました(図11)。

(図9)2020年中に予定・検討している国内旅行の出発時期(2~5月調査)(単一回答)

*2月調査では「2-3月(春休み)」、3月調査は「3月(春休み)」とし、4月調査以降では選択肢から削除したため、3月調査結果を掲載
*4月調査では「4~5月(GWなど)」、5月調査では「5月」とした



(図10)2020年中に予定・検討している国内旅行の行き先(2~5月調査)(単一回答)


(図11) 居住地別 2020年中に予定・検討している国内旅行の行き先(5月調査)(単一回答)


8.海外旅行の出発時期は、911月や1112月の冬休み時期の意向が高い
  行き先は「ハワイ」、「東南アジア」、「台湾」が人気
 次に、2020年中に海外旅行を予定・検討している人の時期や行き先をみていきます。
 出発時期は、5月調査で「9月~11月(シルバーウィークなど)(28.7%)」、「11~12月(冬休みなど)(25.5%)」が高くなりました。前回調査と比較して、新型コロナの対策が世界的にある程度進むと期待される年末時期の伸びが最も大きくなり、出発時期は国内旅行以上に先となる傾向がみられました(図12)。
 行き先の上位は、ハワイ、東南アジア、台湾などでした。新型コロナが収束している台湾は4月調査から増加に転じています(図13)。一方で、旅行会社の海外旅行ツアーは既に7月までの催行中止を発表しており、航空便の大幅な減便や運航中止も継続しています。海外旅行に行きたいという気持ちはあるものの、この状況が長引けば、さらに旅行時期が先延ばしになる可能性も考えられます。しかしながら、7月のスペインの観光客受け入れ再開など、徐々に回復に向けた動きもあり、今後に期待したいところです。

(図12)2020年中に予定・検討している海外旅行の出発時期(2~5月調査)(単一回答)

*2月調査では「2-3月(春休み)」、3月調査は「3月(春休み)」とし、4月調査以降では選択肢から削除したため、3月調査結果を掲載
* 4月調査では「4~5月(GWなど)」、5月調査では「5月」とした



(図13)2020年中に予定・検討している海外旅行の行き先(2~5月調査)(単一回答)

*5月調査からヨーロッパの聞き方を変更したため、4月調査までの結果を掲載



9.年内に旅行予定があるものの、まだ予約をしていない、あるいは予約した旅行の変更・キャンセルを検討している理由は、「新型コロナの不安がある」が際立って高い
  時間の経過とともに「世間体が悪い」、「旅行先の正確な情報が足りない」が増加傾向
 年内に旅行したいと思ってはいるものの、具体的に予約や検討をしない理由は何なのでしょうか。まだ旅行の予約をしていない、あるいはすでに予約している旅行の変更やキャンセルを検討している人に対して、その理由を聞きました(3月調査からの設問)。結果はいずれの調査月も「新型コロナの不安がある」が最も多く、4月調査で急増し、その後は減少しました(国内旅行:3月 33.5%→4月 54.3%→5月 50.6%、海外旅行:同 39.4%→同 53.1%→同 41.5%)。4月に緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出を控えるなど、新型コロナへの不安が一気に広まりましたが、5月に入り一部地域で宣言が解除されるなど、不安意識が若干落ち着いた様子が読み取れます。
 新型コロナ以外の理由をみてみると、国内旅行意向者は、月を追うごとに「これからの先の具体的な予定がまだわからない」が減少し、状況が把握できてきたことが推察できます(3月:30.1%→5月:24.9%)。一方、3月には少なかった「今旅行したり、計画をたてたりするのは世間体が悪い(同:5.5%→同:12.0%)」や「旅行先の正確な情報が足りない(同:7.7%→同:11.5%)」が増え続けました。
 海外旅行意向者は、スケジュールに関すること以外は国内より回答率が高く、より慎重であることが分かります。国内と同様に、「今旅行したり、計画をたてたりするのは世間体が悪い(3月:5.9%→5月:16.2%)」が増加し、また、5月調査では「旅行先の正確な情報が足りないと感じる」が17.8%と、国内旅行以上に情報不足を感じている割合が高い結果となっています(図14)。

(図14)旅行意向者がまだ予約を確定していない理由(国内/海外旅行別)(3~5月調査)(複数回答)


<新型コロナ感染拡大による消費者の意識や行動変容(JTB総合研究所調査)>
 今回のような感染症拡大、災害、経済危機などはこれまでも社会のあり方や価値観を変え、また旅行や観光にも影響を与えてきました。現時点で未来の観光像の断定は難しいですが、将来どのような変化が考えられるか探っていくために、新型コロナの感染が拡大した3月から5月の間におきた生活や心の変化、また、外出自粛生活の中で話題となった具体的なサービスやしくみなどについて聞きました。


10「スマートフォンやテレビを見る時間が増えた」は3割以上に。「時間をもてあましている」も2
   時間はあるものの、「新しいことへのチャレンジに時間を使う」は増加しなかった
  「AIやロボットより人からサービスを受けたい」は微減傾向。対面サービスにおける感染リスク意識が根付く
 気持ちや行動の変化について項目別に聞いたところ、3月から5月にかけて大きく増加したのは、「スマートフォンをみる時間が増えた(3月:28.0%→5月:35.3%)」、「テレビを見る時間が増えた(同21.6%→同:33.3%)」、「時間をもてあましている(同:9.9%→同:18.1%)」でした。しかし、「時間が出来たので何か新しいことをはじめたい」は、3月から4月にかけて伸長したものの(3月:10.8%→4月14.2%)、その後は伸びていません(5月:14.2%)。新しいことへのチャレンジに時間を使うというより、自粛疲れからか、漠然と時間を過ごしてしまう人も多い様子がうかがえます。
 一方、「AIやロボットより、人からサービスを受けたい」は、3月から5月まで、微減傾向でした(3月:11.7%→4月:8.5%→5月:6.5%)。対面でサービスを受けることは感染リスクを伴うという意識が高まったと同時に、AI内蔵のチャットなど、デジタルツールを活用したサービスも高度になり、デジタルで済めば合理的でよいという意識が広がってきた背景があると考えられます(図15)。

(図15)ここ最近の気持ちや行動の変化(3~5月調査)(複数回答)


11今後の生活でも継続したいことの上位は、「キャッシュレス決済(83.8%)」、「社会貢献をしている企業の商品やサービスを意識して選ぶ(82.3%)」、「オンラインショッピング(82.2%)」
  自粛期間に多く利用されたサービスは「月額制の動画、漫画、書籍等の見放題・読み放題(53.3%)」や「デリバリーサービス(38.9%)」。サブスクリプション(定期購入)サービスは継続意向も高い
 新型コロナの感染拡大で、私たちの生活は大きく変わることになりました。感染防止として、衛生管理の徹底やソーシャルディスタンス(フィジカルディスタンス)の確保、外出自粛により、テレワークやオンラインセミナー、オンライン診療など、初めて意識したり、経験したりすることも多かったと思われます。こういった数々の経験は、収束後も続くことになるのでしょうか。今後の意向について、日常生活における様々な体験と、より具体的なサービスとに分けて聞きました(5月調査のみ)。
 今後の日常生活でも継続したいことは、いずれも高い割合でしたが、「キャッシュレス決済(83.8%)」、「社会貢献をしている企業の商品やサービスを意識して選ぶ(82.3%)」、「オンラインショッピング(82.2%)」、「マスク着用、消毒など衛生管理(81.8%)」、「3密回避・ソーシャルディスタンス確保(80.7%)」が僅差で8割以上となりました。キャッシュレス決済やオンラインショッピングは便利なうえに、感染防止にもなることが改めて評価されたと考えられます。詳細は触れませんでしたが、前述のJTBの調査では、これからの旅行の目的や行き先を選ぶ基準として「安全安心に旅行ができること」や「3密を避けられること」が多くあがりました。「安心安全」は、今後の旅行をする上での前提条件になりそうです。社会貢献に関しては、今後企業は、これまで以上に「社会の公器」であることが求められそうです。他と比べて継続意向が低かったことは、「自宅から離れた場所にも住まいや仕事場を持つこと(63.0%)」、「オンラインでの集まり(飲み会、会合など)(64.3%)」でしたが、それでも半数以上が継続したいという結果となりました(図16)。
 外出自粛生活の中で話題となった具体的なサービスやしくみの利用率をみると、「月額制の動画、漫画、書籍等の見放題・読み放題(53.3%)」や「デリバリーサービス(38.9%)」が上位となりました。また、その中で継続利用が高かったのは、「動画や書籍の見放題・読み放題(75.2%)」や「通販の定期便(69.1%)」など、サブスクリプションモデルでした。一方、これまで利用したことはないが、今後利用してみたいとの回答が多かったのは「ちょっと贅沢なお取り寄せ(56.5%)」、「宿泊施設や飲食店などの前売り券を購入(52.9%)」でした。お気に入りのお店や施設、地域を助けたいという「応援消費」は、これからのスタンダードになるかもしれませんが、緊急時だけでなく、平時から顧客との特別な関係を築き、ファンを増やしていけるかがキーポイントになっていくでしょう(図17)。

(図16)今後の生活で利用を継続したい/減らしたいこと(5月調査)(単一回答)

*「あてはまるものはない」を除いて集計



(図17)各種サービスの利用率と今後の利用意向(利用者・非利用者別)(5月調査) (単一回答)


まとめ

■国内旅行は身近な居住圏内からの動きを予想。引き続き若者の旅行意欲が高い
 緊急事態宣言は解除されましたが、当面、都道府県をまたぐ移動に関しては自粛要請が続いています。家計や経済に関しては、新型コロナの影響で給与が減りそう、節約している、という回答が3割を超え、今後の悪化も懸念されます。このような状況の中で、旅行・観光の回復は、国内旅行からで、まずは身近な域内での観光や友人・知人訪問、帰省などからの動きが多くなりそうです。既にいくつかの地域では県内居住者を対象とした宿泊プランを用意するなど、地域の消費喚起施策が始まっています。地元の人が地元の魅力を再認識、再評価し、SNSなどで発信も期待できる良い機会と考えられます。また、今回浸透してきたテレワークをベースに、ノマドワーク、ワーケーションなど、「暮らす・働く」と「旅行する」の融合が加速するのではないでしょうか。少しずつ変化がみられていたZ世代やミレニアル世代を中心とした旅行のあり方にも今後注目です。
 海外旅行に関しては、過去の旅行者動向をみると、比較的、景気の影響を受けにくい傾向です。またここ数年、活発に海外旅行をしていた若者は引き続き旅行意向が高い結果でした。スペインのように、観光客受け入れ再開の見通しを伝える国が出てくる一方で、7月までの海外ツアーの催行中止が決定され、調査時よりさらに海外旅行の回復は遅れそうです。新型コロナの影響が長引き、雇用環境や経済状況の回復が遅れた場合には、徐々に旅行意向も減少する可能性はあります。また、60才以上の女性では、海外旅行に「二度と行きたくない」という回答も少なくないことから、海外旅行者の世代交代も進む可能性があるかもしれません。

■デジタルの便利さを享受しつつも、欠かせないアナログの価値
 この状況下で、生活のデジタル化(テレワークやキャッシュレス決済、オンラインサービスなど)が大きく浸透しました。一度利便性を体感した消費者が、元の生活に戻るとは考え難く、デジタル化は加速度的に進むと考えられます。あらゆるサービスがデジタルを前提としたものとなる一方、デジタル(バーチャル)の良さを知ったからこそ感じられる「アナログ(リアル)」の価値(人と会う、旅行をする)に気づく面もあります。デジタルとアナログを切り分けて考えるのではなく、デジタルの中に、どのようにアナログを融合させていくかが、新しい魅力的な商品やサービスを生むために重要ではないでしょうか。

新しい生活様式(ニューノーマル)時代の観光をつくり、発信する
 デジタル化に加え、3密の回避などの新しい生活様式(ニューノーマル)も広がりました。本調査でも消毒やマスク着用といった衛生管理や3密の回避は8割以上が継続すると答えています。こういった中、観光においても、新しい生活様式に基づいたあり方の確立が求められます。旅行者も地域社会も「衛生管理は旅のマナー」として、「ポジティブに」進めていくことが必要と思われます。ハワイ政府観光局の戦略で話題となった「レスポンシブル・ツーリズム」は、単に地域が持続可能である観光を目指すだけではなく、旅行者にも責任がある、という考え方です。旅行者がその土地の人々の考え方や行動を共有し、尊重することで、持続可能、かつ、住民と旅行者双方にとって満足度の高い体験が可能となるのです。こういった取り組みにより、観光地(業界・企業)と旅行者と住民との関係性も変ってくると考えられます。持続可能な社会をつくるために「社会貢献をしている企業の商品やサービスを意識して選ぶようになった」と回答した人の割合は8割を超えました。真のファンをつくるためにも、お互いを尊重しあう関係性を構築していくことが重要です。
 2020年に旅行を検討している人が、行くかどうか迷っている理由に、「旅行先の正確な情報が足りないと感じる」、「世間体が悪いと感じる」という回答が時間の経過とともに多くなっていきました。旅先での感染症が疑われた場合の対応や、緊急時の相談、旅先で自分は歓迎されるのかなど不安が多く、決めかねている状況とも受け取れます。ニューノーマル時代の観光とは何か、地域にとって観光の位置づけを再認識すること、また、適切な情報と、歓迎の気持ちを発信し、旅行者へきちんと伝えていくことが、旅行者の不安を払拭し、旅行へ誘うことにつながると思われます。

<参考>感染者数(累積)の推移(世界・日本)と本レポート調査期間

 







<報道関係の方からのお問い合わせ先>
(株)JTB 広報室 03-5796-5833
(株)JTB 総合研究所 03-6722-0759

<調査結果・データに関するお問い合わせ先>
(株)JTB 総合研究所 企画調査部
03-6722-0759
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