スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2019)

2019/11/11

株式会社JTB総合研究所

〇SNS疲れは収束。みる専が増え、SNSは消費の情報源の役割がより強まる

・Z世代・ミレニアル世代女性の5割以上がSNSの投稿を見て旅先や買うものを決定

〇アプリは“定番”だけを残し、ブラウザへと回帰の兆し

・「ブラウザ中心に利用したい(24.6%)」が「アプリ中心に利用したい(19.6%)」を上回る

・継続利用したいのは「地図」、「経路検索・乗り換え案内」、「カメラ」などの定番アプリ

・ブラウザを利用したい理由は「ストレージ容量が圧迫されない」、「動作が軽い」

〇ポイント還元制度の導入でキャッシュレス決済が広がる

 ・最も利用されるスマホ決済は「PayPay」。昨年首位の「Apple Pay」は10位と様変わり

〇スマートフォンでの旅行商品の予約・購入は「宿泊施設(33.0%)」が一人勝ち

・「レストラン予約」や「国内ツアー」が減少に転じる

〇スマートフォンでの旅行予約にかかる時間は「1時間未満」が73.8%と最多

・若いほどかかる時間は長く、29歳以下は「1時間以上(57.4%)」で全体を大きく上回る

・面倒なことは「旅行会社店舗の順番待ち」、「サイトの商品数が多く探すのに時間がかかる」

  

  

 (株)JTB総合研究所(東京都港区 代表取締役社長執行役員 野澤肇)は、「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2019)」を実施しました。本調査は2013年から経年で実施し、今年で7回目となります。当社は、生活者のライフスタイルや価値観が消費行動や旅行に与える影響に関する調査分析を継続的に行っています。

 昨年の調査では、求められるサービスのあり方として、“シームレス&ストレスフリー(Google、LINE、アマゾンなど、1つのプラットフォームの中で様々な用途が完結すること)”がキーワードとして浮かび上がりました。しかし一方では、複数のアプリや機器が連携・同期し、自分の情報が一元的に管理されることに対し違和感を覚える、といった声も聞かれます。

 また今年の10月には、消費税率上昇に伴う需要平準化対策として、キャッシュレス決済におけるポイント還元制度が実施され、スマートフォン決済も含め、キャッシュレス決済が広がっています。このような動きは、私たちの消費行動をどのように変えていくのでしょうか。

 本調査はスマートフォンの利用実態や人びとの意識を継続的に調べることで、今後の生活や旅行行動に関する変化の兆しをとらえようとするものです。

【調査概要】

調査方法:インターネットアンケート調査

実施期間:2019年10月11日~10月17日

調査対象者:(スクリーニング調査)首都圏、名古屋圏、大阪圏に住む18歳から69歳までの男女 10,000名

(本調査)スクリーニング調査回答者のうち、プライベートでスマートフォンを利用し、過去1年以内に

1回以上の国内旅行(日帰りも含める)をしたことがある 980名

 

【インターネットやスマートフォンの利用実態】

1.「電話」の利用が復活。「検索エンジン」、「カメラ」、「地図アプリ」、「ネットショッピング」の利用も大きく増加

 スマートフォンでよく使う機能として、電話やメールはここ数年、減少を続けていましたが、今年は「電話」の利用が増加しました。LINEなど日々のコミュニケーションで利用しているアプリの機能の一つとして無料通話が広がり、「意識して電話をする」のではなく、文字によるコミュニケーションと音声によるコミュニケーションがボーダレス化してきているのかもしれません。

 電話以外で前年より8ポイント以上の大きな伸びを見せたものは、「検索エンジン」、「カメラ」、「地図アプリ」、「ネットショッピング」など、生活に必要な基本的な機能でした。特に伸びが大きかった「検索エンジン」については、検索結果だけでなく、関連する情報(地図や関連サイト、交通情報など)も一元的に表示されるなど、利便性が上がっていることも利用の伸びにつながっているのかもしれません。また、「動画投稿サイト」、「画像投稿サイト」も去年に引き続き増加しました(図1)。

(図1)スマートフォンで良く使う機能              (複数回答)

2.SNS疲れは収束。見る専が増え、SNSは消費の情報源の役割がより強まる

   Z世代・ミレニアル世代女性の5割以上がSNSの投稿を見て、旅先や買うものを決定

 昨年の調査では、Instagram人気でやや“SNS疲れ”が増加する傾向でしたが、今年の調査では「SNSは見るだけで投稿はしなくなってきた」、いわゆる“見る専”の人が増加し、“SNS疲れ”に関連する項目はいずれも減少傾向となりました。

 一方、「SNSの投稿を見て行ってみたいと思った場所に行った」、「SNSで知った情報でいいと思ったものを購入した」は継続して増加し、SNSは移動や消費の情報源としての位置づけをより強めたと言えます。特にその傾向は若い年代で顕著で、ミレニアル世代、Z世代にあたる29歳以下の女性では、5割を超えました(図2、表1)。

(図2) SNSで経験したこと                 (複数回答) 

(表1) SNSで経験したこと(性年代別)            (複数回答)

3.LINE、YouTube、Instagramは続伸し、Facebookは減少。TikTokは男性30~40代に広がり、男性29歳以下は減少Instagramの利用では動画が増加。「いいね!」の数が表示されなくなっても、発信を目的とした旅行は減らない

 スマートフォンで利用するSNSや動画投稿サービスの利用率の推移では、LINE、YouTube、Twitter、Instagram、TikTokが増加し、Facebookは減少しました。増加した中では、Twitterの上昇率がやや鈍化しました。また、TikTokについては、男性の30~40代の利用が昨年より増加(30代:4.9%⇒10.2%、40代:0.0%⇒6.1%)しましたが、29歳以下の男性では減少(15.5%⇒6.1%)しました(表2)。

 “インスタ映え”が流行り、発信することを目的とした移動や消費行動を大きく後押ししているInstagramですが、今年の夏から投稿への“いいね”の数を非表示にするテストが始まり、話題となりました。“いいね”の数が非表示になることで、“インスタ映え”を意識した行動は減るのでしょうか。最近、Instagramの使い方が変わったことについて聞いた結果の中で、“いいね”の数が非表示になったことについての回答では、「利用を増やそうと思った(7.4%)」が最も多くなりました。それに続く、「インスタ以外の利用が増えた(5.6%)」、「投稿したくなくなった(4.1%)」、「投稿を目的とした旅行が減った(3.6%)」といった否定的な回答はそれほど割合が高くないことから、見る人の反応がわからないことが、必ずしも投稿したい気持ちにマイナスの影響を与えるわけではないようです。

 その他にインスタグラムの使い方で変わったこととしては、「ストーリーの視聴が中心で普通の投稿はあまり見なくなった(23.9%)」が最も高く、29歳以下の女性では39.2%に上りました。画像から動画への流れが、引き続きみられます。

 なお、全体で18.7%だった「その他」の内容では、「投稿せず見るだけになった」という回答が多く見られました(図3)。

(表2) スマートフォンで利用する主なSNSや動画投稿サービス(性年代別)(複数回答)

(図3) 最近、Instagramの使い方が変わったこと         (複数回答) 

4. アプリは“定番”だけを残し、ブラウザの利用へと回帰の兆し

 スマートフォンの普及に伴い、アプリの利用も大きく進みましたが、その一方でアプリを使うことに面倒くささを感じる、といった声も聞かれます。そこで、アプリとブラウザの利用と今後の意向について質問しました。全体的にみると、「ブラウザを中心に利用したい(24.6%)」、「アプリを中心に利用したい(19.6%)」となり、ブラウザ派の方がやや優勢でした。性年代別にみると、男性40代、女性30代で ブラウザ派の割合が高い傾向がみられます(図4)。

 アプリとブラウザ、それぞれ利用したい理由を聞いた結果、ブラウザを利用する理由としては、「アプリはストレージ容量を圧迫する(16.3%)」、「ブラウザは動作が軽い(16.3%)」、「アプリは個人情報の入力が面倒(11.8%)」などが高く、アプリを利用する理由としては、「ホーム画面からすぐにアクセスできる(14.9%)」が比較的高くなりました(図5)。

 また、継続利用したいアプリについては、「地図」、「乗り換え案内、経路検索」、「カメラ」など定番のものが上位となっています(図6)。

(図4) アプリとブラウザの利用についての考え方        (単一回答) 

(図5) アプリとブラウザを利用したい理由            (複数回答) 

(図6) 今後も継続利用したいアプリ                  (複数回答)

【購買におけるスマートフォンの利用について】

5. ポイント還元制度の導入でキャッシュレス決済が広がる

    最も利用されるスマホ決済は「PayPay」。昨年首位の「Apple Pay」は10位と様変わり

 2019年10月の消費税率引き上げに伴う需要平準化対策として、一定期間に限り中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元制度が実施され、コンビニ、個人経営の小売店や飲食店などでもキャッシュレス決済システムを導入する店舗が増えました。それに伴い、消費者の利用も広がっています。では実際のところ、スマートフォンを利用した決済はどのように行われているのでしょうか。

 まず、インターネットショッピングや店舗での買い物の際、スマートフォンを利用した決済には何が利用されているのかを聞きました。最も多かったのは「クレジットカード(70.6%)」で、「QRコード(26.7%)」、「コンビニ払いや振り込み(23.0%)」が続きました(図7)。次に、店頭での支払いについては、全体の60.9%が何らかのスマートフォン決済を利用した経験がありました。具体的に利用が多かった決済方法は、「PayPay(30.0%)」、「楽天ペイ(13.5%)」、「LINE Pay(13.1%)」が上位となり、昨年の調査で最も多かった「Apple Pay(4.1%)」は10位と、大きく順位を落としています(図8)。

 キャッシュレス決済(QRコード、非接触型IC、クレジットカードなど)を利用する理由としては、全体の78.6%が「ポイントが還元される」と回答しました(図9)。スマートフォン決済に限定した質問のため、参考データですが、昨年の調査結果で最も回答が多かった理由は「現金を持ち歩かずにすみ便利(51.8%)」でしたので、最近のキャッシュレス決済の広がりには、ポイント還元制度の影響が大きいと考えられます(参考図)。

 世界各国のキャッシュレス決済比率を見てみると、韓国の89.1%、中国の60.0%、カナダの55.4%などと比較し、日本では18.4%(出典:世界銀行2015年)に留まり、キャッシュレス化の遅れが長年指摘されてきました。キャッシュレス化が進んでいる国をみてみると、人手不足や治安対策のために、一定基準以上の店舗でのキャッシュレス義務化やキャッシュレス利用の一部の所得控除が実施されるなど、政府が主導する形で導入が進みました。日本でも「キャッシュレス・ビジョン(2018年)」の中で、日本国際博覧会が開催される2025年にキャッシュレス化を40%の目標が掲げられたことから、今後の広がりが注目されます。

(図7) スマートフォンでの買い物に利用する決済方法       (複数回答)

(図8) 店頭での支払いで利用するスマートフォン決済の種類     (複数回答)

(図9) キャッシュレス決済を利用する理由             (複数回答)

6. スマートフォンを利用した旅行商品の予約や購入は「宿泊施設」が一人勝ち

   「レストラン予約」や「国内ツアー」は減少。 予約や購入をしない理由は「色々な情報を入力するのが面倒くさい」

 旅行関連商品の購入については、2013年の調査開始以来、スマートフォンでの予約や購入は継続して増加し、2019年の調査では過半数を超えました(図10)。しかし、購入される商品に関しては明暗が分かれました。

 過去1年以内に行った直近の旅行について、スマートフォンを利用して購入した旅行商品の内訳をみると、「宿泊施設」のみが増加し、他の商品は割合が下がっています。また、「宿泊施設」は33.0%と2位の「航空券(12.0%)」を20ポイント以上上回る割合を占めました(図11)。性年代別には、29歳以下と30代の男女で特に「宿泊施設」を購入する割合が高い傾向でした。また、29歳以下の女性は「イベントなどのチケット」、「レストランの予約」、「国内ツアー」など、より多くの旅行関連商品をスマートフォンを通じて購入しています(図12)。

 次に、スマートフォン以外で予約購入した旅行関連商品をみてみると、スマートフォンでは4位と7位だった「国内ツアー」と「現地の鉄道やバス」が、3位、4位となりました(図13)。順位が上がった「国内ツアー」と「現地の鉄道やバス」について、なぜスマートフォンで予約購入しなかったのか、その理由をみてみると、「色々な情報を入力するのが面倒」、「店頭や電話で相談するついでに購入」が共に高くなりました。「国内ツアー」を買わなかった理由では、特に「色々な情報を入力するのが面倒」が41.1%と高くなりました。「現地の鉄道やバス」については、「インターネットでは受け付けをしていない商品だった(14.3%)」が比較的高い傾向でした。「高額商品をスマホで購入するのは不安」や「個人情報が漏れると嫌」など、スマートフォンでの購入に関する不安はそれほど大きくないことから、面倒くささや、申し込もうとしてもスマホに対応していなかったことなどが原因となって、“相談するついでに購入してしまおう”という行動につながったのではないでしょうか(図14)。

 ちなみに、スマートフォンでの予約購入、スマートフォン以外での予約購入(パソコン、店頭)における年代分布をみてみると、スマートフォンでの予約購入は29歳以下、30代が多く、パソコンは50代、60代、店頭は29歳以下の割合が多い結果となりました(図15)。

左下(図10)スマートフォンを利用した旅行商品の予約や購入(複数回答)

右下(図11)スマートフォンで購入した旅行関連商品    (複数回答)

(図12) スマートフォンで購入した旅行関連商品(性年齢別)    (複数回答)

左下(図13)スマートフォン以外で購入した旅行商品 (複数回答)

右下(図14)スマートフォンで購入しなかった理由 (複数回答)

(図15) 直近の旅行で利用した予約手段別の年齢分布        (単一回答)

(性年齢で均等割り付けをしているため、参考値)

7. スマートフォンでの旅行予約にかかる時間は「1時間未満」が8%と最多

    若いほどかかる時間は長く、29歳以下は「1時間以上(57.4%)」で全体を大きく上回る

    旅行予約で面倒に感じることは「旅行会社店舗の順番待ち」、「サイトの商品数が多く探すのに時間がかかる」

 次に、直近の旅行に関し、スマートフォンでの旅行予約にかかった時間の合計を聞きました。全体では、「1時間未満」が73.8%と最多で、「1~2時間未満」が16.7%と続きました。性年代別では、29歳以下が最も予約にかかった時間が長く、「1~2時間未満(40.7%)」は全体を20ポイント以上上回っています(1時間以上合算57.4%)。また、「2~3時間未満(9.3%)」、「3時間以上(7.4%)」もそれぞれ全体より高くなりました(図16)。スマートフォン以外も含めた予約については、「1時間未満」が76.2%となり、スマートフォンでの予約の方が、やや時間が余計にかかる傾向がみられました(図17)。若い年代の方がスマートフォンでの予約購入が多いこともあり、予約にかかる時間が長いと考えられます。

 では、旅行会社の店舗やインターネットでの旅行の予約の際に、どのような点が面倒だと感じているのでしょうか。

店舗に関しては、「旅行会社店舗の順番待ちが長い(20.5%)」、「旅行会社の店舗に行くのが面倒くさい(17.1%)」など、順番待ちやそもそも出かけることの億劫さが上位となりました。

インターネットについては、「商品数が多すぎ、探すのに時間がかかる(15.5%)」、「サイト上で入力する項目が多すぎる(14.2%)」などが高く、情報量の多さや作業の煩雑さを面倒と感じている人が多いようです(図18)。

 最近では、AI(人工知能)を利用し、チャットで問い合わせや宅配便の再配達を依頼する、といったサービスも増えました。

AIサービスの利用経験を聞いた結果、全体では利用率が約3割、29歳以下の男性では5割を超えました。旅行関連のAIサービスの利用率はまだそれほど高くありませんが、AIのサポートによって面倒くささを排除することができれば、利用が大きく広がる可能性があるのではないでしょうか(図19)。

左下(図16) スマートフォンで旅行商品の予約にかかった時間(単一回答) 

右下(図17)旅行商品の予約にかかった時間全体の合計(単一回答)

(図18) 旅行の予約の時に面倒くさいと思ったこと(店舗やインターネット) (複数回答)

(図19) AIサービスの利用経験               (複数回答)

【旅の情報収集と“タビナカ”行動】

8. 情報収集方法のトップは「検索サイトで検索(0%)」。「宿泊先のサイト(28.2%)」も地域の情報を得る窓口

    “タビナカ”では、フリーペーパー、ホテルのコンシェルジュや観光案内所など“紙”や“人”を通じた情報も活用

 次に、旅先に関する情報収集について、旅行前(“タビマエ”)と旅行中(“タビナカ”)のそれぞれについて、どのようなところから情報を得ているかを聞きました。

 “タビマエ”の情報収集方法としては、「検索サイトで検索した(54.0%)」が最も高く、「旅行情報・口コミサイトやアプリで調べた(29.1%)」、「宿泊先のサイトで施設や周辺情報を調べた(28.2%)」が続きました。「宿泊先のサイト」は、その施設だけではなく、地域の情報を知るための窓口としても認識されているようです。

 “タビナカ”の情報収集に関しては、「検索サイトで検索した(27.2%)」が最も高くなりました。全体では、「ガイドブックで調べた(26.9%)」を若干上回り、4番目でした。旅先の情報をフレキシブルに、“タビナカ”でも得られることが、より重要になっていると考えられます。また、「現地のフリーペーパー・ガイドブックなどで探した(16.6%)」や「ホテルのコンシェルジュなどに聞いた(13.1%)」も上位となり、インターネットだけでなく、紙や人からの情報も活用されているようです(図20)。

 次に、現地での体験を提供するサービス(現地ツアー)の利用実態についてみてみます。その結果、全体では15.0%、国内旅行では12.1%、海外旅行では40.6%が直近の旅行の際に現地ツアーを利用していました。申し込み先としては、「現地ツアー予約専門サイト(国内2.6%、海外18.8%)」や「旅行会社のオプショナルツアー(国内2.7%、海外16.8%)」とともに、「定額でオプションを自由に選べるツアー(国内2.8%、海外7.9%)」も比較的利用されているようです(図21)。

 利用が多かったツアー内容としては、「自然観光ツアー(36.7%)」が最も高く、「シティツアー(26.5%)」が続きました。海外旅行では、上位2つの割合がより高い傾向で、国内旅行では、「テーマパーク」の割合が比較的高くなりました(図22)。

 現地ツアーを利用する理由として、全体と国内旅行では「効率的に時間を使える」が最も高く、海外旅行では「これだけは、という体験を確保できる」が最も高くなりました。限られた旅程の中で、できるだけ時間を有効に活用し、悔いのない体験を得たいといった気持ちが読み取れます(図23)。また、利用した現地ツアー別に利用理由をみると、シティツアーは全体と同様の傾向でしたが、自然観光ツアーは、「自分で行くところを考えなくてよい」や「ツアーでしかできない体験ができる」、テーマパークは「料金がお得」、人気レストランでの食事は「料金がお得」、「自分で行くところを考えなくてよい」、「現地ガイドの人と交流できる」といった理由も全体と比較して高く、お任せできる気楽さや交流の楽しさなども利用する理由の一つとなっているようです(表3)。

(図20) 旅先に関する“タビマエ”と“タビナカ”の情報収集      (複数回答)

(図21) 現地ツアーの利用                   (複数回答)

左下(図22)利用した現地ツアーの種類    (複数回答) 

右下(図23)現地ツアーを利用する理由    (複数回答)

(表3)参加した現地ツアー別の利用理由 *国内旅行、海外旅行の両方を含む。ピンクは全体より6ポイント以上大きいもの。 (複数回答)

【まとめ】

  • SNSは “メディア”として、消費のきっかけを作る情報源としての役割がより一層、強まる

 Instagramで「いいね」の数が見えなくなったことへの反応から、必ずしも他者からの評価がわからなくても、発信したい気持ちに大きな影響があるわけではないことがわかりました。普通の投稿ではなく、24時間で消えるストーリーの利用や、ハッシュタグをつけない投稿が増えた、といった回答も少なくないことから、見る人に負荷をかけない範囲で自己欲求を満たせればよいと考える人も少なくないのではないでしょうか。

 また、いわゆる「みる専(SNSは見るだけ)」の人が増え、SNS疲れは収まる傾向がみられました。これまで他のアジア諸国と比べ、日本はSNS利用にあたり、気を使いすぎる傾向があり、ネガティブな意見も多い傾向がありましたが、今後は他国同様に、より旅行の情報源としての活用が進みそうです。

 

  • 「面倒くさい」が多い若者。サービスはより“シンプル”な方向へ

 スマートフォンを利用した旅行商品の購入が広がる中、スマートフォンを利用した予約購入を“面倒”と感じ、結局店頭や電話で購入する人も少なくないことがわかりました。特に若い年代では、パソコンではなく、スマートフォンで予約することが多いために、小さな画面にあふれる情報から意思決定をしなければならない煩わしさを、より感じているようです。購入されている旅行商品も、単品の「宿泊施設」が一人勝ちでした。これから若い世代が年を重ねても、パソコンで複雑な作業をこなして予約をするようになるとは考えにくく、サービスはよりシンプルな方向へと流れています。今後は、AIのサポートなどにより、個人の潜在的な欲求も踏まえながら、さらに簡単に、シンプルに、が究極のパーソナライゼーションの方向性かもしれません。

 

  • アプリからブラウザへと回帰。その先は?

 今回の調査結果から、アプリは必要最低限の“定番”だけ残し、ブラウザを使いたいという意向が見えました。要因の一つとしては、アプリを利用するために、個人情報を提供しなければならないことへの抵抗感や面倒くささがありました。

 それに加え、もう一つの要因となるのは、動画などの視聴が増え、スマートフォン上で処理をするデータ容量が大幅に増えたことです。“ギガ不足”といった言葉も耳にするようになりましたが、ダウンロードに時間がかかったり、動きが遅かったり、といったことなく、より快適に利用したい、という意識があるのではないでしょうか。来年の春から5Gサービスが開始されれば、さらに日常で取り扱うデータ容量が増えることが予想されます。データも個人の手の中に持つものではなく、スマートフォンの枠を超え、クラウドでシェアする時代に変わる可能性もあります。ブラウザの先に求められるものは何か、継続的にみていきます。

  

(*1)  「海外観光旅行の現状2019」(JTB総合研究所 2019年6月28日)

<お問い合わせ>
(株)JTB総合研究所 
調査分析担当:早野陽子
広報担当:早野・三ツ橋・波潟
03-6722-0759 
www.tourism.jp
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