韓国の旅行者の訪日旅行に関する調査研究(1)

2017/10/30

株式会社JTB総合研究所

要約

● アンケート調査対象者(過去 3 年以内の海外旅行経験者)の訪日経験率は全体で 83.8%
出国率の高い韓国旅行者(韓国 38.1%、日本 12.8%*)にとって日本は日常の延長の身近な旅行先

日本を旅行先に選んだ理由は日本の伝統文化への関心ではなく、「食」や「個人的な興味や趣味にちなんでいる」、「ショッピング」への関心にある。「日本の日常生活に触れたい」意向が高く(48.6%)、「温泉」や「居酒屋めぐり」をしたい。*出典:日本政府観光局(JNTO)「日本の国際観光統計 2015」

 

● 一回の訪日旅行で訪問した都市は 3 カ所以上が多(73.8%)、
訪日経験が増すと、1~2 カ所の訪問よりも、3 カ所以上の訪問割合が上がる傾向になる

日本の地方都市への航空路線が多く、LCC利用も多い韓国の旅行者は訪日経験が多くなると、入出国の際、異なる空港を利用する割合が増加する。日本国内を広域移動するケースも少なくない。よって個人旅行(65.1%)が多く、フリーのパッケージ旅行は 16.4%。一方似た環境である台湾の旅行者は経験が増えると移動はむしろ減少し、正反対の結果が出ている。

 

● 宿泊経験は、韓国は「カジュアルなホテル(9%)」、「高級ホテル(31.8%)」、「日本式旅館(31.9%)」

オーストラリアは「高級ホテル(47.5%)」「カジュアルなホテル(41.6%)」「日本式の旅館(25.7%)」、インドネシアは「日本式旅館(55.6%)」「カジュアなホテル(50.2%)」「リゾートホテル(36.5%)」の順。インドネシアは訪日の未経験者は多いが、経験者はリピーターとなり、多様な宿泊施設の経験がある。民泊も 29.1%と多い

 

● かっこいいと思うブランドは欧州ラグジュアリーブランドや韓国ブランド、グローバルITブランド
「SNSの投稿を見て行ってみたいところに出かけた」36.7%、「SNSの投稿を見て買った」29.3%

インドネシアは日本の自動車や電気メーカーも名前があがる。韓国の旅行者、特に若い世代は当社のミレニアル     世代の調査から、ファッションやライフスタイルに日本の情報を参考にする人が多いことが分かっていたが、‘あこがれ’というよりも国内の情報と同じ感覚に近いと考えられる。

 

株)JTB 総合研究所(東京都港区 代表取締役社長 野澤  肇)は、「韓国の旅行者の訪日旅行に関する調査研究」をまとめました。当社は生活者のライフスタイルや価値観が消費行動や旅行に与える影響に関する調査研究を多様な視点で継続的に行っています。

訪日外客数の 2017 年 1 月~9 月までの累計は 2,119.6 万人となり、過去最も早いペースで 2,000 万人を超えました(日本政府観光局(JNTO)10 月 18 日発表の推計値による)。訪日旅行者の増加に伴い、当社は国・地域別マーケティングの重要性に早くから注目し、これまでタイ、フランス、中国、台湾からの旅行者に焦点を当ててきました(*1~*4)。今回は、日本と同じ環太平洋地域のうち海外渡航に航空機を主に利用する国の韓国、インドネシア、オーストラリアの旅行者を対象に、訪日旅行を含む海外旅行全体への意識と行動について明らかにします。
今回の調査では特徴をより分かり易くする試みとして 3 か国とも同じ設問を用い同時比較でしたが、本文では韓国の旅行者を中心にレポートします。
韓国は中国に次いで訪日旅行者の多い国ですが、古くから個人旅行者多く、また1人あたり消費額が少ないため大きく注目はされていません。しかし、ここ最近の訪日旅行者は大きく増え、また今年7-9月の1人あたり旅行支出は前年同期比で 10.0%上昇しており(観光庁「訪日外国人消費動向調査」10 月 18 日発表)、訪日旅行市場において他のアジアからの今後の旅行者の動きをみる上でも重要な位置づけと考えます。

*1「タイ人の旅行とライフスタイル」(2015 年 9 月 15 日)」
*2「日本へ旅行したいと考えているフランス人のライフスタイルと旅行に関する調査」(2016 年 3 月 28 日)
*3「居住地別(沿岸部、内陸部)にみる中国人旅行者の旅行動向調査」(2016 年 10 月 14 日)
*4「台湾からの旅行者の心理と行動に関する調査研究」(2017 年 3 月 14 日)

 

【調査概要】

調査方法:インターネットアンケート調査
調査対象国:韓国(693 サンプル)、インドネシア(607 サンプル)、豪州(673 サンプル)
調査対象者:過去3年以内に海外観光旅行へ行ったことがある 18 歳以上の男女
調査実施:2017 9

 

<過去3年以内に海外旅行に行った韓国の旅行者の調査結果>

【属性】(図 1~4)

● 職業は、全体では会社員が 8%。29 歳以下の男性は学生の割合が高い(39.7%)。兵役期間の影響もあると考えられる。
● 旅行頻度は「少なくとも2,3年に1回以上は海外旅行へ行く」(海外旅行コア層)の割合が全体で 4%、中でも 18 歳~29 歳と 30 代の男女で海外旅行コア層の割合が高い。
● 全体の 8%が過去に日本への訪問経験あり(観光、ビジネス含む)。ビジネスでの訪日は 81.2%が経験なし。

 

【直近の海外旅行について】(図 5~図 10

● 直近の海外旅行先は、「日本(21%)」「ヨーロッパ(9.5%)」「香港マカオ(8.4%)」の順で多い。その際に検討した場所は、「日本(27.8%)」、「香港マカオ(25.1%)」。
● 直近の海外旅行の形態は「個人旅行(53.1%)」が最も多いが、18-29 歳は男女とも個人旅行が 8 割近くを占め、フリープラン型パッケージツアーは 1 割強程度。50 歳以上男女では約半数が団体型(添乗員・ガイド付き)パッケージツアーを占める。
● 直近の海外旅行の交通手段は「航空機(フルサービス 」が 60.9%、「航空機(LCC)」が 35.8%。18-29 歳の男女は半数前後がLCCを利用。
● 直近の旅行の購入先は、全体では「ウェブサイト」が 3%だが、女性 18-29 歳は 85.2%、女性 30 代は 78.6% とウェブサイトでの購入割合が高い。
● 海外旅行の考え方については、行き当たりばったりより「あらかじめ詳しく調べてやり残しがないようにしたい(57.0%)」が多い。「海外で話題になっている場所へ行きたい(43.7%)」が「自国や友人・家族の間で話題になっている場所へ行きたい(36.2%)」より多く、「その国ならではの文化が感じられる宿に泊まりたい」が 4%と半数以上が思っている。
● 訪日意向については 「半年以内に計画している」が全体の 7%、「1 年以内」24.2%。「興味がない」は特に女性 18-29 歳、女性 30 代で割合が高かった(全体 12.7%、女性 18-29 歳 18.3%、女性 30 代 15.3%)。ただし実際の旅行者の数を見てみると、訪日旅行者で最もシェアが高いのは女性 18-29 歳(25.7%)である。「興味がない」=(イコール)「訪問しない」ということではなく、近いゆえにあまり意識せず、旅行条件面で折り合いがつきやすい訪問先であると考えられる。

 

【直近の訪日旅行と過去の日本における経験について】(図 11~図 18

● “直近の海外旅行が日本である旅行者は「個人旅行」が 5%(海外全体 53.1%)、「フリープラン型パッケージツアー」は 16.4%(海外全体 20.8%)。
● 訪日の交通手段は「航空機(フルサービス)」が 49.2%、「LCC」が 46.7%。個人旅行では「LCC」は 53.3%と半数以上となる。
● “最後に経験した訪日旅行では3都市以上訪問する人が 8%と 1~2 カ所訪問よりも多く、訪日経験が多いほど、一回の旅行で3都市以上訪問する人の割合が増える傾向に。経験数が増えると移動が少なくなる台湾の旅行者とは逆の傾向が見られた。
● 訪日経験回数が多くなると広範囲の移動が増え、入出国で異なる空港を利用する割合が増える。
● 過去に経験した日本旅行で、旅行先に日本を選択した理由は、「食(全体 38.9%)」で若い世代ほど関心が高い。「個人的な興味や趣味にちなんだ場所がある(全体 31.2%)」「ショッピングが楽しめる(全体 29.4%)」が続く。
● 過去に日本で利用したことのある宿泊施設は「カジュアルタイプのホテル(全体 50.3%)」、「高級ホテル(全体 31.2%)」、「日本式の旅館(全体 30.6%)」。「民泊(全体 13.9%)」は 20 代、30 代で利用が多い。 

 

【日本への旅行の考え方】(図 19~図 28

● 日本人との交流については、全体では「日本の日常生活に触れたい(48.6%)」、「お祭りなどの日本の地域の活動に参加するなど、積極的に交流をもちたい(30.6%)」が高く、特に若い世代の意向が高い。「日本の歴史や文化について日本人に説明してもらいた(23.1%)」、「農家民泊など地域の人とふれあえるところに泊まりたい(23.0%)」は年齢が上がるほど意向が高い傾向となった。
● 田舎と都市部のどちらを訪れたいと思うかについては、海外旅行全般 は「どちらかというと大都市より田舎を訪れる方が好き」は 27.9%だったが、日本旅行全体では 52.2%と多い。18-29 歳は全体より田舎派が少なく、過半数以上が都市派であった。年齢が上がるほど田舎派の割合は増える傾向だった。
● 日本で体験したいことは、「温泉(61.3%)」が最も高い。旅行先に日本を選択した理由には「食」が上がっていたが、懐石料理よりはラーメンなどカジュアルな料理が好まれる傾向。
● 夜の時間に体験したいことは、全体では「バーや居酒屋めぐり(48.4%)」、「温泉めぐり(45.8%)」が高い。ただし 40 歳以上の女性は温泉めぐりの方をより楽しみたいと考えている。「商店街や温泉街でのショッピング(31.6%)」「アウトレットや大型 SC でのショッピング(26.4%)」が3位、4位と続く。
● 日本の文化や芸術品についての興味で、「持っている/見に行ったことがある」「集めている/習っている」が多いものは「マンガ」「弁当・弁当箱」「映画」「着物」の順。着物は 18-29 歳および 50 歳以上の女性に人気が高いが、18-29 歳男性の人気も比較的高い。
● SNSで「いいね!」などのリアクションをすると思う写真を選んでもらった結果では、年齢差よりも男女差の方が大きく、男性はスポーツや祭り、クッキーづくり、 BQ など人が観たり体験したりする様子、女性はキャラクターや土産物などを好む傾向だった。過去の調査では、日本人旅行者は、見たり体験したりする様子は女性から好まれていた。国によって画像の好みにも違いがあるようだ。

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