韓国の旅行者の訪日旅行に関する調査研究(2)

2017/10/30

株式会社JTB総合研究所

 

 以上、韓国の旅行者についての調査結果を記載しましたが、インバウンドのマーケティングにおいて、ターゲットを国別に考える場合、他国あるいは日本人との比較により旅行者の嗜好を明確にイメージしやすいと考えられます。今回の調査では同一の質問による調査をオーストラリア、インドネシアの海外旅行者にも行っていますが、その一部から韓国からの旅行者の姿をさらに可視化していきます。

 

【インドネシア、オーストラリアとの比較で韓国の旅行者をさらに可視化する】(図 29~図 34、表 1~表 2)

● 韓国では、日本旅行の経験者は多いが、1~2回の経験者が 3%を占め、3回以上のリピーターの割合はインドネシアとほぼ同程度となっている。

● 日本を旅行先に選んだ理由として、韓国からの旅行者は「日本の伝統文化への関心」や「最新技術やトレンドを体験できる」が他の二国に比べて低く、「食」、「個人的な興味や趣味にちなんだ場所がある」、「ショッピング」が高い。夜に日本でやりたいことは、「居酒屋めぐり」、「温泉」、「商店街や温泉街でのショッピング」が高く、「日本の伝統芸能鑑賞」は他の二国より低い。

● 経験した宿泊施設は多い順に、韓国は「カジュアルホテル(50.3%)」、「高級ホテル(2%)」、「日本式旅館(30.6%)」、インドネシアは「日本式旅館(55.6%)」、「カジュアホテル(50.2%)」、「リゾートホテル(36.5%)」、オーストラリアは「高級ホテル(47.5%)」、「カジュアルホテル(41.6%)」、「日本式の旅館(25.7%)」

● 普段の情報源は、韓国、インドネシアでは「テレビ番組」「ニュースサイトやアプリ」「家族や友人の体験談」「SNSでの友人の投稿」「新聞(デジタル)」が上位となった。一方オーストラリアでは、SNSや新聞の代わりに「好きなブランドや企業のサイト」「メールマガジン」が入り、企業や団体からの情報が他の二国よりも重視されているようだ。

● 外出や購買へのSNSの影響は、インドネシアで「昔の知りあいとSNSでつながり再び交流するようになった(51.2%)」「SNSで知った情報でいいと思ったものを購入した(36.4%)」など全体的にSNSによる影響が強い傾向が見られる。韓国は「SNSの投稿で行ってみたいと思った場所に行った(36.7%)」が最も高く、インドネシアに次いでSNSの影響が強く、オーストラリアが最も影響が低い傾向となった。過去の調査と比較すると、インドネシアは比較的タイや台湾の傾向、オーストラリアは日本の傾向と近かった。

● かっこいいと感じるブランドは韓国では欧米の高級ブランドや自国のブランド、グローバルITブランド、インドネシアは日本のメーカーが多く、オーストラリアは自国や日本のカジュアルなブランドだった。

 

 

【韓国の旅行者のまとめ】

● 訪日旅行は普段から興味関心があることを楽しむ、日常生活の延長線上にあるもの

 韓国からの訪日旅行者は、訪日の経験率が高く、「日本でしたいこと」の上位に「個人的な興味や趣味にちなんだ場所がある」が出ていることから、より訪日旅行がパーソナル化していることがうかがえます。高級なものよりカジュアルな宿泊施設や食を好む傾向にあり、日本の伝統文化への関心も低いことから、韓国の人々にとって訪日旅行とは、日常の延長線上として普段から楽しんでいることを体験できる、気軽な国内旅行感覚のものであることが推測されます。
 「かっこいいと思うブランド」に欧米のブランドがあがる一方、インドネシアやオーストラリアと違い、日本のブランドはほとんどありませんでした。「最新技術やトレンドの体験」への関心も本調査では高くはなく、他のアジア新興国のような「日本だから」「日本製だから」良いといった関心の持ち方とは違うことが分かります。マンガや映画も日本の異文化として受け入れているとは考えにくく、もはや日常の楽しみの1つと捉えて良さそうです。

 

● 訪日経験回数を重ねるほどに、広域移動が増える

 日本国内の宿泊を伴う訪問先を訪日経験回数別にみた結果では、一回の旅行で「3カ所以上訪問する」が 7 割以上を占め、12 カ所滞在より大幅に多い結果となっていますが、訪問回数が増えるとさらに3カ所訪問する人の割合が高くなっています。例えば訪日経験回数が1回の場合は福岡、長崎周辺や西日本への移動が多い一方で、経験が増えると九州から北海道や沖縄などへ広範囲に移動していくケースがあることがわかりました。韓国から日本の地方への路線が多く、入出国の空港を変えることも容易で、またLCCの利用で格安ですむことから自分自身の興味に応じ国内の交通手段を活用しながら大きく動いているようです。おなじく地方路線やLCCの多い台湾からの旅行者の調査(*4)では、訪日経験回数が少ないうちはゴールデンルート(東京-富士山-大阪) の割合が高く、訪日経験回数が増えるにつれて少数の都市での滞在型となる台湾からの旅行者とは反対の傾向がみられるのは興味深く、これこそ、それぞれの旅行者の嗜好を捉え、同じ日本の地域であってもそれぞれに合った施策を考えることが必要です。

 

● SNSが消費や外出のきっかけに。海外旅行では事前の情報収集が重視される

 韓国におけるSNSの消費や外出への影響をみると、「SNSの投稿で行ってみたいと思った場所に行った(36.7%)」が最も高く、SNSが外出のきっかけとなっています。また海外旅行の考え方については、「あらかじめ旅行先について詳しく調べやり残しがないようにしたい」が最も高いことから、事前の情報収集が重視されていることがわかります。自分が関心のある分野を深めたいと思うと、下調べも綿密に、ということなのかもしれません。
 「かっこいいと感じるブランド」については、欧米の高級ブランドやグローバルブランドが目立ちました。情報発信に際しては、いいと思う画像や、ブランドなどの好みのテイストや男女差などを踏まえたコンテンツ選びも必要です。

 

 以上から韓国からの旅行者に関しては、発信内容に関しては日本国内で話題になっているファッションやライフスタイル、スイーツといった食のトレンドなどきめ細かく捉えること、情報の伝え方に関してはデジタルマーケティングによる韓国で最も効果的な手法を取り入れスピーディーに伝えることが関心を惹きつけるポイントになりそうです。
 韓国の出国率が日本より高い背景には、旅行者の幅広いニーズを国内の観光地だけでは取り込めない現状、つまり有名な国内の観光地や観光を楽しめる自然や田園風景の少なさにもあると言われています。日本が自身の地域の魅力を知るためには、対象とする国の旅行者の志向や動きと共に、その国の観光の現状を知ることも必要ではないでしょうか。日本を広域に移動していることからも、地理的な近さだけの地域連携だけではなく、同じようなテーマを持った地域との連携を図ったり、国内をダイナミックに動ける航空、鉄道、バス(シートインコーチなど)の交通手段を提供したりすることなども一案と考えられます。まだ訪問者数が比較的少ない北陸や東北などへも工夫を凝らせば誘引につながる期待ができそうです。

 

インドネシア、オーストラリアを主体とした分析結果につきましては別途お問い合わせください。

 

<お問い合わせ>
(株)JTB総合研究所
www.tourism.jp
調査・分析担当:早野、波潟
広報担当:早野・三ツ橋・波潟
03-6722-0759
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