LCC利用者の意識と行動調査2017 その2

2017/08/07

株式会社JTB総合研究所

 

6.LCCの会社選びの基準は 78.4%「航空運賃が一番安いこと」。「行きたい場所への直行便がある」が 42.4%
  フルサービスの航空会社を選択する理由は「旅行スケジュールに合わせて選べる便数の多さ」。
  国内旅行では「成田空港ではなく羽田空港を利用したい」が続く。許容できる料金差は所要時間で変わる

LCC の航空会社を選ぶ基準は、全体では「航空運賃が一番安い(78.4%)」が最多で、次は「行きたい場所までの直行便がある(42.4%)」でした。性年代別には大きな違いがありませんでしたが、これをタイプ別にみてみると、高アンテナタイプは「行きたい場所までの直行便がある」、「フライトと自分のスケジュールが合っている」など、価格に加え自分の行きたい旅行先へ到達するための妥当な手段として LCC を選択していました。共感タイプでは「比較サイトで上位に出てくる」が他のタイプより高くなりました。共感タイプには若い人も多くみられ、自分以外の評価基準を求める気持ちが強いことから、比較サイトの重要性は高くなるのでしょう。メリハリ消費タイプでは「自宅近くの空港から発着している」「日本の会社であること」などが高く、気軽さや安心感も重要だと考えられます(図 13)。

既存の航空会社を使いたい理由は、国内旅行では空港の近さや便数などターミナルや、海外旅行ではシートの快適さや運航の正確さを挙げる人が多くなりました。国内線では使い勝手の良さ、国際線では長い飛行時間を快適に過ごしたい、現地の時間を有効に使いたいなどの気持ちが背景としてありそうです(図 14、15)。また、既存の航空会社を利用してもよいと思う場合の LCC との価格差は、飛行時間が長くなるほど高くなり、片道 2 時間未満では「少しでも LCC より高ければ使わない」割合が 30%と多い一方、片道 5 時間を超える飛行時間の場合には「2 万円以上高くても利用する」と回答した人の割合が 20%となりました(図 16)。LCC で有料のオプションサービスを利用するか聞いたところ、全体的には国内旅行より海外旅行の方が有料オプションの利用率が高く、年代別では 30 代で比較的利用率が高い傾向がみられました。最も利用率が高かった「座席指定」は国内旅行が 34.3%、海外旅行が 33.5%と、ほぼ同程度の利用率でした。手荷物預けや飲食・物品購入などは海外旅行の方が高い傾向がみられます(図 17、18)。

 

  

 

(直近のLCCを利用した旅行経験から、商品の購入について知る)

. LCC 航空券の購入場所は国内旅行の 74.6%が「LCC航空会社のホームページ」。前回調査より 5.9 ポイント減少
  海外旅行は「LCC航空会社のホームページ」大きく減少(▲17.9 ポイント)し、「旅行予約サイト」が 13.9 ポイント増加

旅行商品を選ぶ上で、どのように LCC が選択され購入されているのか、直近の旅行からみてみます。今回の調査も前回に続き、国内旅行も海外旅行も「LCC 航空会社のホームページで予約(国内 74.6%、海外 55.0%)」が最多でしたが、国内旅行は前回調査から 5.9 ポイント減少し、「旅行予約サイトで予約」が 18.6%と前回から 5.6 ポイント高くなりました。また海外旅行では「LCC 航空会社のホームページで予約」が 17.9 ポイント減とポイントを落とす一方、「旅行予約サイトで予約(31.4%)」が 13.9 ポイント増と大きく伸びています。特に海外旅行においては、航空券とともに宿泊なども予約することが多く、たとえ旅行予約サイトで手数料がチャージされていたとしても、宿泊特典でお得感があったり、また就航当時よりも LCC が旅行会社の商品に組み込まれたりすることが増えたことも要因であると考えられます(図 19)(図 20)。

 

 

8. 旅行商品を購入する際の一番最初に起こすアクションは、
  「お気に入りのオンライン専用の宿泊予約サイトで探す」国内旅行 44.9%、海外旅行が 26.3%でともに 1 位
  航空機を使った国内旅行では、55.3%がフライトから予約し、42.9%が宿泊から先に予約する

旅行商品および旅行商品を探す手段は現在驚くほどの種類と数があります。旅行者が旅行先決定後の商品選びの段階で、一番最初に起こす行動は何なのでしょうか。最も多かったのは「お気に入りのオンライン専用の宿泊予約サイトで探す(国内旅行 44.9%、海外旅行 26.3%)」でした。旅行以外でも利用できるポイントがたまるサイトなど、特に国内旅行で優先的に利用している人が多いことが要因の一つとして考えられます。海外旅行では既存の「お気に入りの旅行会社のサイトで探す(16.4%)」、「旅行比較サイト(トラベルコやスカイスキャナーなど)で航空券を探す(10.3%)」が続きました。国内旅行も海外旅行も最初のアクションは上位 6 位までがインターネットの利用でした。旅行者の間では、まず最初にネットで調べることが定着していることが分かります。「旅行会社の店舗に行って相談する」、「旅行会社のパンフレットで比較する」は少数派となっています(図 21)。

次に最初にアクションを取ってから、旅行商品を決定するまでに、どのようなサイトを見て検討しているかを聞いたところ、旅行者は実に様々な手段で旅行商品を調べていることが明らかとなりました。全体では「旅行比較サイトでパッケージツアーを探す(国内旅行 32.2%、海外旅行 24.6%)」が最も多い結果でした。国内旅行、海外旅行別では、それぞれ「旅行比較サイト」がすべて上位 5 位以内に入り、また国内旅行では上位 8 項目が、海外旅行では上位 9 項目の回答が 10%を超えています。性年代別の特徴としては、若い世代ほど旅行比較サイトやオンライン専門宿泊予約サイトなどの利用率が高く、年代が上がると特定の会社のサイトで探す割合が高い傾向がみられました。また、30 代の女性はインターネットだけでなく、旅行会社のパンフレットでの比較や、旅行会社の店舗で相談するなどの割合も高くなりました。旅行意欲が旺盛な世代でもあり、小さい子供を持つ人も少なくないため、綿密に調べて失敗がないようにしたいという気持ちの表れとも言えるかもしれません(図 22、23)。

また、航空機を利用した観光旅行では、まず宿ありきで旅行の計画を立てるのか、それとも航空機ありきなのかを明らかにするため、最初に予約するものは何か聞きました。その結果、国内旅行、海外旅行ともに「最初に日程があうフライトを探してとる」が最多でした。その傾向は特に海外旅行で強く、航空機での移動が中心となる海外旅行では、まずは足を確保することが先決であると考える人が多いようです(図 24)。

 

 

9. お気に入りのLCCの情報を積極的に取得しようとする人の手段は「HPをお気に入り登録」が 61.1%
  メルマガ登録は 38.8%。若い人ほどSNSをフォローも多くなる

前述のLCCに対する具体的な評価で「好きな国内線 LCC がある」と回答した人に、そのLCCの情報を取得する手段について聞いてみました。「HP をお気に入りに登録する」が 61.1%と最多でした。2 位以下には、メルマガ登録(38.8%)、 会員登録(36.7%)と続きました。頻繁に情報を得たいというよりも、必要な時にすぐチェックできるようにしておくという人が多いようです。また、ツイッターやフェイスブックなどの「SNS をフォローする」は、若い世代ほど多くなり、全体では 17.6% のところ、18~19 歳では 32.7%に上ります。LCCはコストを最小限に抑えていることから、サービスで付加価値をつけることや、ポイントプログラムへの参画、テレビCFなどの広告宣伝費を使いにくいといった環境にあり、いかに顧客を囲い込む かが課題と考えらえます。SNSで視覚に訴え、ゆるいファンづくりをすることも、主要顧客である若い層を取り組む有効な手段であると考えられますが、逆に利用者である彼らからの情報発信力にも期待できそうです(図 25)。

 

 

10.まとめ

当社のこれまでの経年調査を通じ、LCCは旅行者数が拡大する中で、イノベーター理論のいわゆるフォロワー層(当社の価値観タイプで合理派、体験重視、メリハリ消費)が経験者の 6 割にまで広がってきていることが分かりました。旅行者にとってLCCの価値は年々「価格」に集約され、「遅延」や「キャンセル」が不便さや不満につながる大きな要因である一方、格安だけにサービスなどには最初から期待せずに利用している様子もうかがい知れました。また就航当初は価格による「お得感」が旅行の回数や現地での宿泊や食事にお金をかけるということに多少なりとも影響を与えていましたが、今回の調査ではその影響が減少し、LCCは普通の交通手段の1つとして広い層に定着したといえます。

 
一般的に新しい商品やしくみが広く浸透すると、当初の斬新さや話題性は薄れ、コモディティ化が進み、価格に焦点が集まります。LCCの仕組み自体は交通インフラとして定着しましたが、LCC各社としてはコストを最小限に抑えるため、高付加価値やマイレージポイントによる差別化、広告宣伝費の大量投下は難しく、価格戦略に加えて、今後どのようにCRM(顧客管理)戦略を行い、リピーターを増やし、利用者数を伸ばしていくのか注目したいところです。これはLCCをはじめ一般の企業活動だけではなく、人気の広がった観光地などにいかに持続的に旅行者に来てもらうかという点では共通の課題といえるでしょう。フォロワー層まで人気が広がると、むしろ高アンテナといった、新しいものに関心が興味を持つイノベーター層が離反しはじめ、やがてフォロワー層も他のものをフォローして全体として人気が落ちるという事例は少なくありません。

LCCの場合は 20 代 30 代の若者層に支持され、最近では若い女性の伸びが大きくなってきました。彼らはSNSを積極的に利用する世代でもあります。訪日外国人旅行者も意識しながら、特に画像を効果的に使い、ゆるいながらもファンを増やし、利用者との情報接点をより多く作ることも1つの手段と考えられます。また 40 代以上の女性の利用は伸び悩み、あまり利用したくないと考える人も多い一方で、男性は年齢があがっても利用率は増加し続けています。一人旅も多い健康なシニア男性の旅行機会を増やすなど、ターゲットによってそれぞれ最適な情報接点や商品をつくることが重要です。

また、今回の調査結果から、旅行商品を選ぶ際に、商品だけでなく探す手段の数も種類も多く、中でも「比較サイト」の利用が浸透していることがわかりました。比較サイトの表示では、価格に焦点が当たり、商品の内容や質を伝えることは困難と考えられます。今後は企業自身がメディア媒体となることを意識し、自社の魅力を伝えていくことがより重要になると考えられます。

 

<お問い合わせ>
(株)JTB総合研究所 03-6722-0759 www.tourism.jp
調査・分析担当:三ツ橋、早野、波潟
(広報担当 三ツ橋・早野・波潟)
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