LCC利用者の意識と行動調査2017 その1

2017/08/07

株式会社JTB総合研究所

 

LCC利用者の意識と行動調査 2017

〇国内線 LCC の利用経験がある人の割合は 25.5%
前回調査(2015 年)から 3 ポイント増、伸びは緩慢に。30代以下の若い女性に広がる

〇LCC の価値は年々「料金の安さ」に集約される傾向に
「格安=サービスを抑えている」を前提に、「期待していないから期待外れもない(46.1%)」が利用の拡大を後押し

〇旅行商品を購入する最初のアクションは「お気に入りのオンライン専用宿泊予約サイトで探す(国内旅行 44.9% 海外旅行 26.3%)」
それに続く他の手段は「旅行比較サイトでパッケージツアーを探す(32.2%)」。比較サイトでの宿や航空券の検索も多い。旅行会社のパンフレットや店舗での相談は少数派
LCC 航空券の購入場所は「LCC航空会社のHP」が減少し、「旅行予約サイト」が大きく増加

 

(株)JTB総合研究所 (東京都港区代表取締役社長 野澤肇)は、「LCC利用者の意識と行動調査2017」を実施しました。当社は、生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を継続的に行っています。

格安航空会社(LCC)が 2012 年に国内に就航して約 5 年が経ちました。当社は、低料金で商品を提供する代わりに空港の立地や施設の利便性、便数などを抑え、座席の快適さやサービスを最小限にカットしたLCCが新しい交通手段としてどのように日本人の間で広がっていくのか、旅行にどのような影響を与えるのかに関心を持ち、2013 年から 15 年まで継 続的に調査を行ってきました。LCCは国内就航後この 5 年間で利用者が広がり、航空旅客数全体に対するシェアを上げてきましたが、国内定期路線の航空旅客数合計も 2016 年の 97,203 千人と、2 12 年の 84,939 千人から 14%上昇しており(出典:国土交通省航空局航空輸送量推移表)、LCCの登場は旅客数の拡大に大きく寄与しているといえそうです。

最近では、ピーチアビエーションが全日空の完全子会社となり、日本航空がベトジェットと提携し、人気の高いホノルル路線に関空からLCCが就航するというような動きが見られ、LCCとフルサービスの航空会社とがどのように共存していくのかも気になります。

 今回の調査研究では、この 5 年間で旅行者のLCCに対する意識がどう変化し、旅行消費や行動にどんな影響を与えたかを知ると同時に、LCCの普及を通じて当社が研究してきた、‘旅ライフセグメント(TLS5)’を用いて、新しい商品やしくみが人々にどのように伝わるかというプロセスと、意識や考え方への影響をとらえ、これによりどんな課題が見えてくるかを考えてみました。

 

■調査概要

<スクリーニング調査>

・関東、中部、関西に居住する18 歳以上の男女 59,666 人回収。(関東:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県/中部:岐阜県、愛知県、三重県/関西:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)

・2012 年以降の航空機利用者: 29,262 人

・国内線LCC 利用率については時系列比較のため、2012 年調査開始時の調査対象地域である首都圏、大阪圏に絞って算出(25,707 人)。地域別のみ、中部を加えた29,262 人としています。

・回収は、エリア(3セグメント)および年代(5セグメント)を、平成22 年国勢調査の比率に出来るだけ沿うよう実施。
 集計時には性別(2セグメント)の比率もあわせウェイトバックを実施。


<本調査>

・2012 年3 月以降に、旅行※1 のために国内線LCCを利用したことがある人1,545 人

・集計は、スクリーニング調査で得られたエリア(2セグメント)・年代(5セグメント)・性別(2セグメント)の国内線LCC利用者出現率によりウェイトバックを実施。

※1:本調査では特に断りのない限り、観光、業務出張、帰省等を含むものを指し、日帰り・宿泊は問わない。

○調査方法と調査時期:インターネットアンケート調査 2017 年7月19 日~7月23日

 

 

■調査結果

(LCCの広がりについて)

1.国内線LCCの利用経験がある人は、2012 年以降の国内線航空機利用の旅行者のうち 25.5%
  30 代以下の若い女性に利用が広がっているが、50 歳以上の女性は伸び悩む

2012 年以降の国内旅行における航空機利用の旅行者のうち、国内線LCCの利用経験のある人の割合は 25.5%で、2 年前の前回調査から 3.0 ポイント増加しました。前回の調査時ほど伸びは大きくありませんが、引き続き増加傾向です。今回の調査では、初期の LCC 利用者に多かった 29 歳以下の男性に代わり、29 歳以下と 30 代の女性や 50 代男性の利用率が上昇し、より幅広い層に広がっている様子がわかりました(図1-1)。しかしながら 50 歳以上の女性の利用率は横ばいです。居住地別では、前回調査同様に、関西が最も高い利用率となりましたが、最も伸びが大きかったのは関東でした。

2012 年当初は成田空港から国内線に搭乗することへの戸惑いの声も聞かれましたが、2015 年には成田空港に LCC 専用ターミナルがオープンするなど、利便性の向上も伴い、徐々に抵抗感が薄れてきたということではないでしょうか(図1-2)。航空会社別にみると、就航先の拡大などから各社とも利用率が伸びています(図2)。

 

 

2. 国内線LCCは「観光」での利用が 78.9%と、調査開始以来最も高い結果に。業務出張は減少傾向で 11.7%
  LCCを利用した理由は「価格」が 89.0%(前回調査 90.1%)、「LCCに乗ってみたいから」は最も減少し、8.7%

 

観光を目的とした国内線 LCC の利用は今回の調査ではこれまでで最も高い 78.9%でした。一方、「業務出張」での利用は減少し、11.7%で最も低い結果となりました。業務利用では、利便性や時間効率が重視されることから、普及が進むにつれて観光の割合が上昇してきたと考えられます(図3)。

国内線でLCCを利用した理由を直近の経験から聞いたところ、 89.0%が「価格が安かったから」となり、前回の調査結果(90.1%)より微減とはいえ、他の理由より群を抜き高い結果でした。やはりLCC の最大の魅力は「価格」であると言えるでしょう。価格の次に高かった理由は「目的地への到着時間がちょうど良かったから」で15.7% でした。「LCC に乗ってみたかったから」「キャンペーンで特別価格になっていたから」は前回調査より減少し、またテレビやネットニュースの影響も少なくなりました。LCCが話題性だけではなく、着実に人々の移動の足として広がってきた様子がうかがえます(図4、図 5)。男女別でみると、男性では「行きやすい空港にLCCが就航した。など利用のしやすさが、女性では「キャンペーンで特別価格になっていた」「パッケージツアーがLCCを利用した」など価格や選択肢の広がりが利用を後押ししているようです。

国内線LCCの就航がもたらした変化については、「特にない (29.4%)」が前回の調査より6.9 ポイント増加し、その他の選択肢については全体的に減少傾向となりました。ここでも LCC の広がりに伴い、LCC が特別なものではなく、身の回りにごく自然に存在するものとなってきていることがわかります(図6)。

 

 

. LCCを利用する前後での気持ちの変化は、46.1%が「LCCにはあまり期待をしていなかったので、期待外れということはなかった」、「期待をしていなかったが、乗ってみたら期待以上だった」が 23.3%と続く

LCCを利用する前後での気持ちの変化を聞いてみたところ、「LCCにはあまり期待をしていなかったので、期待外れということはなかった」と答えた人が約半数の46.1%となりました。LCC が低価格で商品を提供できる理由(従来フルサービスの航空会社が提供してきたサービスなどをコストカットすること)を利用者が事前に理解し、あまり過度な期待をしていない結果、期待外れと感じる人も少ないようです。特に女性でその傾向が強い結果となりました。「期待をしていなかったが、乗ってみたら期待以上だった」は、20代の女性で多く、前述の若い女性のLCC 利用の増加と観光目的の割合が高くなっていることともつながりがあると考えられます。「LCCに期待しており、乗った後も満足」は全体では 22.7%で、男性に多い結果でした。全体的に満足した割合と不満・期待外れの割合を比較すると、「満足」である割合が高くなりました。この不満の少なさも、LCC が浸透してきている要因としては大きいと言えます(図7)。

 

 

4. LCCは日本就航の初期には利用の少なかったフォロワー層まで利用が広がる
  波及力のある「共感」タイプの利用者が 30.2%と最も多く、今後の利用意向も高いことから今後も広がりに期待

当社は旅行者の姿を可視化することを目的に、日常生活や旅行に対する意識や行動についての価値観をもとに、旅行者を5つのタイプに分け・旅ライフセグメント5(TLS5)'として分析を行ってきました。LCC利用者についても 2013 年以来、継続して利用者のタイプ分類を行うことで、LCCという新しい交通手段であり旅行商品が生活者の中でどのように伝わっていくのかを調査分析してきました。

今回4回目となる調査で、LCC利用者のタイプの内訳の変化をみてみると、新しい流行に敏感で、所得も比較的高く、マーケティングでいうところのイノベーターの位置づけである「高アンテナ」タイプは減少しました。一方、流行に捉われず、無駄なお金は使わないが本当に気に入ったら価格にこだわらない「メリハリ消費」タイプが増加し、「合理派」「体験重視」と合わせフォロワーが6割に上り、一般的な生活者タイプの構成により近づいてきました。LCCは初期に利用の少なかったフォロワー層まで広がり、数ある交通手段の1つとしてのポジションを築いています。また「共感」タイプが 30.2%と依然最も多いですが、この層はLCCを前向きに利用しようとする発信力のある若い人が多いこともあり、今後さらにLCCは拡大することが考えられます。一方、「高アンテナ」は、既にLCCは新しいものではなくなっていること、所得の高い人が多いこともあり、既存の航空会社を優先したい意向が他より高くなっています。またフォロワーである「メリハリ消費」はバブル世代が多く、倹約はするものの過去の消費体験から、やはり既存の航空会社を優先したい意向が高い傾向が見られます(表1)(図8)。

旅行の頻度とLCCの利用の関係については、環境に左右されず安定的に旅行に出かける旅行「コア層」とそうでない「ライト層」という視点でみると、国内線LCCの利用者の中でも「海外旅行コア層」の利用割合が高く、LCC の利用者は国内旅行だけではなく海外旅行にも積極的に出かけている層が多いことがわかります(図9)。

 

 

(LCC の具体的な評価)

5. 国内線、国際線ともに「減便や休便が多い」、「最近、価格が高くなってきた」は前回調査より減少して評価が上昇
  CAやカウンターなど人的対応が良いと答えた人は減少し、「従来の航空会社の方が安心できる」は上昇
  ただし評価が下がることがあっても直近の旅行経験では必ずしも不便や不満として感じていない

LCC に対する利用者の評価は国内線、国際線ともに、前回調査に比べ「減便や休便が多い」、「最近、価格が高くなってきた」という項目が減少し、評価が上がっています。一方、空港や機内での人的サービスについては、対応が良いと感じている人は減少しています。「従来の航空会社の方が安心できる」は上昇しています。LCC のブーム的な利用が落ち着き、他の航空会社とのサービスの比較や自分にとっての心地よさで評価をする段階になってきたといえるでしょう(表2)。

直近の旅行で実際に不便だと感じたことを聞いた結果では、国内線も国際線とも遅延、欠航以外はほとんどの項目で 2014年から減少し続けています。男女別に不便だったことの違いでは、男性では「付加料金がわかりにくかった」「座席指定料が高かった」「飲み物代が高かった」など、主に料金の不明瞭さや高さへの不満が大きいのに対し、女性では「搭乗口が遠い」「空港が自宅から遠い」「遅延した」など、想定より時間がかかることへの不満が大きい傾向がみられました。今後の利用者の不満を軽減していくためには、男女別の傾向に合わせた情報提供も考慮すべきかもしれません(図 10、11)。

また、今後 LCCを「できれば利用したくない」「二度と利用したくない」と回答した人に対し、その理由を自由に回答してもらったところ、二度と利用したくない理由としては「欠航・遅延」「シートの座り心地の悪さ」「他の利用客が気になる」があがりました。できれば利用したくない理由としてあがった「ターミナルが遠い」「マイレージを貯めたい」といった理由よりも、今後の利用を決定付ける上で重要となる要素と言えそうです(図 12)。

 

 

<お問い合わせ>
(株)JTB総合研究所 03-6722-0759 www.tourism.jp
調査・分析担当:三ツ橋、早野、波潟
(広報担当 三ツ橋・早野・波潟)
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