海外旅行の現状2017

2017/06/08

株式会社JTB総合研究所

<海外観光旅行の質の変化>
〇日本人の海外旅行先はアジアへのシフトが進む。特に若い世代では海外旅行と言えば学生時代から韓国や台湾など「近距離」の傾向が見られる
〇直近の旅行形態は FIT(個人手配旅行)が 55.1%。スケルトンツアー(自由行動型ツアー)も含めると約8割は旅行先で自由行動
ライフスタイルの多様化で、自分のスタイルを崩さない消費行動にシフト。同行者と現地集合・解散など別行     動を取ったことがある経験割合は、海外旅行でも国内旅行と同程度の 27.3%(国内旅行 28.3%)に上り、行程のフレキシビリティーが重要に

 

<直近の海外観光旅行>
〇直近の海外観光旅行の申し込み先は 69.1%がインターネット。
〇インターネットでの旅行商品申し込み割合がやや低く、店舗申し込みが多いのは、18-39 歳女性と60 歳以上女性。特に若い人ほどインターネットで困った経験も多い。操作性や煩雑さ、表示のわかりにくさなどに不満。インターネットで申し込まない  由は「選択肢がありすぎてわからない(18-29 歳 25.2%、全体 20.5%)」

 

<海外観光旅行のコア層とライト層>
〇経済や社会環境に応じて海外旅行者数は増減するが、環境に左右されず安定的に海外旅行へでかける「海外旅行コア層」は存在する。一方、海外旅行者数が大きく増える「ブーム」の際は浮動票ともいえる「海外     旅行ライト層」の割合が上昇
海外旅行コア層は、国内旅行の頻度も高い。2016 年国内旅行平均回数は 3.3 回(全体 2.0 回)海外旅行コア層に多い価値観タイプはイノベーターである「高アンテナ」と「体験重視」。コア層からの誘いが     活発になるとライト層が動き、海外旅行者数が増える可能性も
〇海外旅行コア層は情報感度が高く、「その国ならではの文化が感じらる宿に泊まりたい」「知られていない場所や土産物を自分で探して見つけたい」。「地域の日常生活に触れたい」「ホームステイなどで地域の人と     触れ合いたい」など海外旅行先の人々との積極的な触れ合いも求める

 

(株)JTB 総合研究所(東京都港区  代表取締役社長  野澤  肇)は、「海外観光旅行の現状 2017」の調査研究をまとめました。当社は生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を多様な視点で継続的に行っています。
日本人の海外旅行者数は 2012 年の過去最高の 1,850 万人をピークに減少し続けていましたが、2015 年に底を打ち、2016 年には前年比 5.6%増の 1,711 万人と上昇に転じました。2017 年 1 月から 4 月までの平均伸率も7.1%と順調に推移する一方で、旅行商品ブランドの取り扱い人数は 2016 年 12 月~2017 年 2 月まで前年割れが続いています(*)。海外旅行者数の増加に相反してブランド取り扱い人数が減少しているという、市場との乖離は商品が今の旅行者のニーズと違うことを示しているといって良さそうです。
海外旅行商品の企画には、為替や運賃ルール、世界市場における航空座席や宿泊の供給環境など、これまで多くの要素が影響してきました。さらに IT の普及で流通システムが大きく変わり、新しいビジネスモデルの参入により、旅行分野での競争が激化しています。一方、市場分析は従来から業界内の事情が中心です。人々の価値観やライフスタイルが社会の変化とともに多様化する中、消費者としての旅行者の行動やニーズに、私たちは真に向き合っているかという点では検証の余地がありそうです。
本調査では、今の旅行者のニーズをつかむヒントを探るために、あまり環境に影響されることなく安定的に海外観光旅行に出かけるコア層と、そうではないライト層との違いを新たな着眼点として取り入れ、現在どんな人がどんな旅行を行っているのか、より詳細な旅行者の可視化を試みました。その一部を紹介します。

(*)出典:日本政府観光局(JNTO)「出国日本人数」  観光庁「旅行商品ブランド(募集型企画旅行)の取り扱い状況」

 

【調査概要】

調査方法:インターネットアンケート調査
スクリーニング調査対象者:全国に居住する 1879 歳の男女   40,000 人へのインターネットアンケート調査本調査対象者:スクリーニング調査対象者の中で、2016 1 月以降に海外観光旅行(ビジネス旅行を除く)をした人 2,060
調査期間:2017 年 5 月 8 日~5 月 15 日

 

【はじめに:2000年以降の海外旅行】

1.日本人の海外旅行先はアジアへのシフトが進むが、近年はハワイ、欧州のシェアがやや持ち直しの動き
2000 年以降の海外旅行先の変化を、当社が毎年継続的に実施している「海外旅行実態調査」の結果から見てみると、2000 年時点では 19.7%のシェアだった欧州が 2011 年には 14.3%に、2000 年に 14.2%だった北米が2012 年には 7.7%と遠距離方面がシェアを下げてきました。一方 2000 年時点では 40%にも満たなかったアジア地域(東アジア、中国、東南アジアの3地域の合計)が、2011 年に 56.4%とシェアを大きく拡大し、2015 年には 53.9%を占めています。この背景には、アジア新興国の経済成長と LCC を含めたアジアを結ぶ航空路線の拡大、日本経済の低迷とデフレ、韓流ブームなど様々な要因が影響したと考えられます。近年は海外旅行者数が伸び悩む中で、欧州やハワイなどのシェアはやや持ち直す動きも見られます(図1)。
また 2000 年以降の海外旅行経験者の年間の一人当たりの平均旅行回数(ビジネス含む)は、ほとんど変わらず推移しています(図2「年代別平均旅行回数の推移」2016 年海外旅行の現状についての調査2016 年 9 月9 日リリースより再掲)。
以上より、2000 年以降における海外旅行は、旅行先に変化はあるものの、頻度は変わらず、行く人は旅行に行っていることがわかります。では、海外旅行商品を提供する側は、海外観光旅行に行く人をどのようにとらえ、自社のお客様としたらよいのでしょうか。

  

2.海外観光旅行に安定的に出かける“コア層”は全体では女性に多い傾向。60-79 歳男女に特に多い海外旅行者数が大きく増える年には“海外旅行ライト層”が動く。減少傾向の近年はライト層が動いていない
海外観光旅行者数は、為替や国際情勢、景気などに左右されますが、一方であまり市場環境に影響されることなく安定的に海外旅行をする海外旅行コア層は少なからず存在します。旅行商品を販売する側にとってコア層をリピーターとして取り込むことはごく自然なことと考えられます。そこで、海外旅行の頻度について得られた回答から、以下の5つの層、海外旅行コア層、海外旅行ライト層、国内旅行コア層、旅行ライト層、⑤旅行無関心層に分類し、特徴をまとめました。
“海外旅行コア層”(「海外旅行へは必ず1年に1回は出かける」および「海外旅行へは 2~3 年に1回は出かける」)は市場全体の 14.7%、海外旅行ライト層(国内旅行が中心だが、誘われたり、周りで話題になったりした時にだけ海外旅行へ出かける)は 16.1%という結果となりました。国内旅行コア層(主に国内旅行だけに出かける)は 31.3%、旅行ライト層(あまり旅行はしないが、誘われたり、周りで話題になったりした時だけ主に国内旅行に出かける)は 10.1%、旅行無関心層(旅行にはほとんどでかけない)は 27.8%となりました。
実際に海外旅行に出かけた年ごとに、各層の割合を見てみると、海外旅行者数が過去最高だった 2012 年には海外旅行ライト層や国内旅行コア層の割合が比較的高く、海外旅行に普段はあまり出かけない層が動いていることがわかります。性年齢別にみると、海外旅行コア層は女性が男性より多い傾向にあり、特に 60 歳以上の女性で最も割合が高く、20.8%でした。次に 60 歳以上の男性 17.2%でした。一方、旅行無関心層は女性より男性で多い傾向が見られました(図3、図4)。

 

3.“海外旅行ライト層”が海外へ行く理由は、「家族や友人に誘われた」、「卒業や周年記念などの節目」が多い
“海外旅行ライト層”が行かない理由は、経済的な理由に加え、「旅行先での治安が不安」、「パスポート切れで申請     が面倒くさい」など、コア層より外的要因や精神的な理由が大きい

2016 年に海外旅行へ出かけた理由として、海外旅行コア層、ライト層ともに最も高かったのは「家族や友人からの誘いがあった」でした。層別にみると、海外旅行コア層では、「有休がとりやすかった」「格安航空券やツアーがあった」「行きたい場所への直行便があった」などが2位以降に続き、海外旅行ライト層では「卒業や周年記念など節目だった」が2位となりました。
一方、2016 年に海外旅行へ行かなかった人に対して「行かなかった理由」を聞いたところ、海外旅行コア層は「仕事や子育てなどで手が離せなかった」「有休がとりにくかった」「一緒に行く人がいない」などが比較的多くなりましたが、海外旅行ライト層は、「経済的な余裕がない」「旅行先でのテロなど治安が不安だった」「パスポート切れで申請が面倒くさかった」「旅行の準備や計画がなんとなく億劫」などがコア層より高い結果となりました(図5、図6)。コア層は自分自身の物理的な事情が影響する一方、ライト層は外的な要因や精神的な影響が垣間見られ、旅行環境が改善するとコア層ライト層を誘い、ライト層が動くというような構図があるのかもしれません。

 

【直近の海外観光旅行(2016 1 月以降)の実態】

4.直近の旅行は1都市滞在型が 66.9%。周遊型は男性に多い傾向。60-79 歳男女は周遊型の割合が大幅に高まる旅行形態は、FIT(個人手配旅行)が 55.1%。スケルトンツアー(送迎なし・あり)を含めると約 8 割が自由行動型
直近の海外旅行(2016 年 1 月以降、2017 年 5 月まで)の旅行先は、台湾(12%)、韓国(8%)をはじめとするアジア地域が全体の約半数を占めました。その他の旅行先として、ハワイ(15%)、欧州(15%)への旅行者が多い傾向でした(図7)。滞在個所数別には、「1都市に宿泊滞在する旅行」が 66.9%、「複数の都市や国を回る周遊型」は 33.1%でした。性年齢別で周遊型か滞在型かを見てみると、女性に比べ、男性で周遊型が多い傾向がみられました。特に 18-29 歳男性が 37.9%、30 代男性が 39.3%と4割近くを周遊型が占めています。60 歳以上になると男女ともに周遊型の割合が 4 割以上と大幅に高まります(図8)。この傾向は加齢によるものか、世代によるものなのかはこの後の調査が必要です。
旅行形態は、個人で航空券やホテルを予約・購入した FIT(個人手配旅行)が 55.1%と過半数を超えました。スケルトンツアー(送迎なし・あり)を含めると、約 8 割が旅行先で自ら自由に行動をしていることになります。性年齢別で見ると 60 歳以上の男女で現地ガイドや添乗員付きのツアーの割合が高く、最も FIT の割合が高いのは 50 代の男性でした。海外旅行コア層、ライト層別にみると、コア層では FIT と現地ガイド・添乗員付きツアーの割合が高く、ライト層ではスケルトンツアー(送迎あり、なし)の割合が高くなりました(図9、図 10)。
旅行形態別に選んだ理由を聞いたところ、FIT とスケルトンツアーを選んだ理由の1位は「自由に行程を組み立てたかった」で、「他の旅行形態より安くついた」が続きます。現地でもスマートフォンなどを通じ様々な情報が入手できる現在、自分が行きたいところに、行きたいときに出かけたいという気持ちが強まっていることも考えられます。一方、ツアーを選んだ理由を見てみると、「初めて旅行する場所だった」「ツアーの内容がお得だった」「現地で効率的な移動ができる」が上位となりました(図 11)。

 

5.旅行申し込み先は、ウェブサイトが 69.1%。インターネット申込みのうち 67.5%がFIT(航空券・ホテル) 店舗の利用(来店)が最も多いのは、18-29 歳の女性 31.6%(全体 21.2%)
インターネット旅行申込みで困ったこと:「選択肢が多すぎて何を選べばよいかわかりにくい」は若い世代で特に多い
直近の海外旅行を申し込んだ場所は、全体ではウェブサイトが 69.1%で最も割合が高い結果となり、次いで 店舗(来店)の 21.2%でした。性年齢別にみると、ウェブサイトでの申し込み割合が最も高いのは 40 代の女性80.1%)でした。一方、39 歳以下の女性は比較的店舗での申し込み割合が高く、18-29 歳の女性は 31.6%、30 代女性は 28.6%となり、全体の 21.2%と比べて 10 ポイント前後高くなっています。男性の中でも 18-29 歳男性は来店による店舗の利用率が高く、店舗利用は若い世代に多い結果でした。これは昨年の調査と同様の傾向です。現地ガイド付きツアーや添乗員付きツアーは、旅行会社店舗(非来店)、旅行会社コールセンターが多い結果となりました。また、海外旅行コア層、ライト層別にみると、コア層ではウェブサイトでの申し込み割合が高く、ライト層では旅行会社店舗(来店)の割合が高い傾向となりました(図 12~図 14)。
利便性の高さから海外旅行もインターネットによる申込みが主流となっていますが、困った経験はないのか聞いてみました。全体では、「選択肢がありすぎて何を選べばよいかわからない(20.5%)」、「空き状況など必要なことがわかりにくい(17.1%)」「サイトの動きが重くて時間がかかる(16.9%)」が上位になりました。年齢別にみると、18-29 歳では、「選択肢がありすぎて何を選べばよいかわからない」、「空き状況など必要なことがわかりにくい」「申し込むまでのステップが多すぎる」「予約内容の確認方法がわからない」などが他の年齢と比較して高くなりました(図 15)。若い世代で店舗利用が多いのは、インターネットでの申し込みのわかりにくさが原因の一つと考えられます。

 

6.旅行会社を利用することについての考え方は、27.5%が「小さい会社は不安なので大手を利用したい」
冒頭でも述べたとおり、最近は、「旅行商品ブランド(募集型企画旅行)の取り扱い人数」が市場と乖離がみられたり、今年 3 月に旅行会社てるみくらぶの経営破たんが起きたり、旅行会社を取り巻く環境は楽観できるものではありません。そこで海外旅行者にとって、旅行会社を利用することについての考え方を聞きました。全体では「面倒な予約を代わりにやってくれて便利(29.2%)」、「小さい会社は不安なので大手を利用したい(27.5%)、「自分でホテルなどを予約するよりツアーの方がお得(25.0%)」が上位に来ましたが、これを直近の旅行形態別に見てみると、現地ガイド・添乗員付のパッケージツアー利用者にこの意向が高く 4 割近くにのぼったものの、FIT 旅行者は 2 割前後に留まりました。FIT 旅行者がスケルトンツアーや現地ガイド・添乗員付パッケージツアーより高くなった回答は「自分で宿泊施設や航空券を予約した方が安心(FIT19.3%、全体 13.4%)」、「手数料を取られそう(FIT18.2%、全体 12.4%)」「旅行会社の店頭は混んでいるので利用したくない(FIT15.1%、全体 13.1%)」となりました(図 16)。

 

【海外旅行者の今の姿を、コア層、ライト層の視点を交えて可視化する】

ここからは、海外旅行コア層海外旅行ライト層別に、利用旅行会社、情報取得方法、旅行経験や意向を見ていきます。

7.旅行情報を得るために登録しているサイトやメルマガ: 海外旅行コア層 1 位  ANA、2 位JAL、3 位  楽天トラベル海外旅行ライト層は 1 位 じゃらん、 2 位 楽天トラベル、3 位 JTB
次にインターネットでの情報収集や困った経験などについて聞きました。旅行の情報を得るために登録しているサイトやメルマガは、全体と海外旅行コア層では、1 位 ANA、2 位 JAL、3 位楽天トラベル、海外旅行ライト層では 1 位じゃらん、2 位楽天トラベル、3 位 JTB となりました。

ANA や JAL は「サイトのお気に入り登録」の割合が比較的高く、楽天トラベルは「メルマガ登録」の割合が高い傾向が見られました(図 17)。

 

8. 若い世代は学生時代の海外旅行経験は多いが近距離旅行が多い。上の世代ほど学生時代に遠距離旅行を経験旅行先での自分でやってみた経験 「現地交通機関の利用」、「国際線の乗継」、「鉄道やバスでの個人旅行」などは、40~50 代のバブル世代前後の年齢層で経験率が高い傾向、海外旅行コア層の経験率も高い
海外旅行者の過去における経験値は、今の旅行に影響しているのでしょうか。学生時代(18 歳以上)にどのようなところへ海外旅行したかを聞いた質問では、年代により明らかな差が見られます。年齢が若くなるほど学    生時代の海外旅行経験は豊富ですが、18-29 歳の男女では近距離の韓国や台湾の割合が高い一方、男性の 50 歳以上、女性の 40 歳以上では、フランス、イギリス、イタリア、ドイツなど欧州の割合が高い結果となりました。次に海外旅行先において、どれだけ自分自身で行動することができるのか、海外旅行先での経験について聞いたところ、全体では「現地交通機関の利用(66.9%)」「国際線の乗継(47.3%)」「鉄道やバスでの個人旅行(46.3%)」が高くなりました。海外旅行コア層、ライト層別では、コア層がどの項目においてもライト層より高く、海外旅行へ安定的に出かけているだけに、経験値の高さが伺えます。
また性年齢別では、特に 40~50 代のバブル世代前後の男女でどの項目も経験率が高い傾向となりました。バブル景気やプラザ合意以降の円高の中で、若い頃から海外旅行を謳歌してきたバブル世代は、ある意味では特殊な存在であるのかもしれません(図 18~図 20)。
最近では、航空機を利用してグループで国内旅行へ出かける場合、スケジュールや利用するマイレージの種類など、各人の都合に応じて現地集合・解散などをするケースも珍しくありませんが、海外旅行の場合はどうなのでしょうか。海外旅行先での同行者との別行動経験を聞いたところ、同行者と別行動をしたことがある人は海外旅行経験者の 27.3%となり、国内旅行の 28.3%とほぼ変わらないことがわかりました。また、海外旅行コア層とライト層別にみると、海外旅行ライト層でも別行動経験の割合は決して低くありません。海外旅行でも、行程などにおいて、国内旅行と同等のフレキシビリティーが実は求められているともいえそうです(図 21)。

 

9.海外旅行コア層は、国内旅行の頻度も高い。コア層の 2016 年国内旅行平均回数は 3.3 回(全体平均は 2.0 回) 海外コア層に多いタイプは「高アンテナ」と「体験重視」。イノベーターである両者の誘いでライト層が動く可能性も
ここまで見てきたことから、海外旅行コア層も少なからず国内旅行には出かけることを想定し、どの程度の頻度で旅行にでかけるのか、スクリーニング調査から算出しました。その結果、コア層の 2016 年国内旅行平均回数は 3.3 回と全体平均の 2.0 回を大きく上回りました。海外旅行コア層は、海外だけでなく国内旅行へも積極的に出かける、重要なターゲットであると言えます。

 

当社のこれまでの調査研究から、新しい商品やサービスが普及する際には高アンテナタイプと体験重視タイプが自分の興味や関心に基づいて探し当てたモノやコトの中で、共感タイプが良いと思ったものを他者へ共有・発信し、情報が広がっていくことがわかっています。合理派メリハリ消費タイプは、情報が広がった後に動くフォロワー層です。では、海外旅行のコア層とライト層にあてはめて考えてみるとどうでしょうか。海外旅行コア層のタイプ別シェアを見てみると、高アンテナタイプは 15.6%、体験重視タイプも 13.0%とそれぞれ平均を上回っています。一方、ライト層をみると、メリハリ消費合理派タイプのシェアが全体よりも高くなりました。前述したとおり、旅行環境の改善とともに、まずは海外旅行コア層が動き、その動きを見ていきたくなったり、誘われたりすることでライト層が増える、という構図が成り立ちそうです(図 22、図 23)。

 

10.「その国ならではの文化が感じられる宿に泊まりたい」:全体 37.4%、海外コア層 39.8%、ライト層 35.5%
「知られていない場所や土産物を自分で探して見付けたい」:全体 23.3%、海外コア層 25.8%、ライト層 18.3%
「買い物や観光がメインなので泊まる場所は安いところでよい」:全体 21.1%、海外コア層 20.9%、ライト層 22.5%
海外旅行コア層、ライト層別に、海外旅行に対する考え方(重要視したい点、こだわりたい点)について聞きました。全体では、「あらかじめ旅行先について詳しく調べてやり残しがないようにしたい(47.5%)」、「海外で話題になっているおのを買ったり食べたりしたい(46.7%)」が上位となりましたが、大きな傾向としては、海外旅行ライト層はコア層に比べて、事前に詳しく調べ、行きあたりばったりは避け、また海外でも国内でも「話題になっている場所、ものや食べ物」を自分でも経験したいという傾向が見られました。一方、海外旅行コア層は、その国ならではの文化が感じられる宿への興味や、知られていない場所や土産物を自ら探して体験するなど、新しいことへの好奇心の高さが分かるような項目が高い傾向が見られました。これらは前述の当社の価値観マーケティング「TLS5」において、海外旅行コア層に「高アンテナ」タイプが多いことと合致します。
海外旅行先の地域との交流についての考え方を聞いた質問では、全体では「地域の日常生活に触れたい(44.8%) が最も高く、次いで「地域の歴史や文化について深く知りたい(38.7%)」となりました。海外旅行コア層とラ イト層の違いをみると、海外旅行ライト層では「地域の歴史や文化について深く知りたい」「店員さんと雑談を する程度でよい」がコア層より高い一方、コア層は「地域の日常生活に触れたい」「ホームステイなどで地域の 人と触れ合いたい」「地域活動への参加など積極的に交流したい」など、より直接的な地域との交流を望んでい る割合が高い結果となりました。
また、最近増えている一人旅については、全体では「目的がはっきりしている場合やマイペースで動きたいときには一人旅がよい」という回答が高くなりましたが、海外旅行ライト層は「国内旅行は1人でも海外旅行は誰かと行きたい」という意識も強い結果となりました(図 24~図 26)。

 

11.まとめ
本調査では、市場環境や旅行業界の事情にはかかわらず、あくまでも現在の海外旅行者の姿を可視化することを目的として、旅行者の意向や行動に焦点をあてました。そのため、調査結果からはソリューションというよりは、更なる課題や仮説が浮き彫りにされ、今後検証を進めたり決断を求められたりすることが必要と思われる発見が多く集まりました。

海外旅行コア層の特徴の1つとして、経済的な理由や国際情勢に比較的左右されずに海外旅行をする、旅行情報や商品に対する感度が高く、一人旅行に抵抗が少なく、国内旅行の頻度も高いことが分かりました。また FIT でネット利用が多い結果が出ました。
コア層はマーケティング理論の「イノベーター(当社の価値観マーケティングの高アンテナタイプ)」が多く、合計で約 5 割が他者に影響力のあるインフルエンサーです。一方、海外旅行ライト層はインフルエンサーが約 4割、フォロワーが約 6 割。フォロワー層に広がった商品はやがて類似品の多いマス向けとなり、価格が重視され、さらに世代交代やトレンドの変化で顧客が枯渇するリスクがあります。常に新しい顧客を取り込むために新しい手法を取り入れ自ら変わる努力が必要です。旅行商品ブランド(募集型企画旅行)を主力とする企業の戦略と海外旅行コア層の行動はマッチしないかもしれませんが、短い期間で外資系 OTA が日本の旅行者の間に広がった経緯を考慮しながらマーケットに真に正対し、旅行商品ブランド(パッケージツアー)におけるブランド価値や特典とは何なのかを、今に至る背景から議論する価値はありそうです。
最近東日本で販売を中止すると発表した老舗菓子メーカーの長寿スナック菓子について、日本経済新聞は、メーカー側はその菓子を売り込む努力を怠っていたと厳しい見方をしていました。1020 代が支える菓子市場でその菓子の主要顧客は 40 代。2014 年にテレビ CF を終了する一方で SNS などを活用して若者を取り込むことがなかったそうです。長寿ブランドでも新規顧客の開拓は必要です。40 代は若い頃にバブルとその崩壊を経験したメリハリ消費が多い世代でフォロワー層。健康志向によるスナック離れも見過ごせません。旅行商品においても商品やサービスを提供する側がフォロワーではあってはならないということなのでしょう。

*本調査内容のご活用その他のご相談に関しましては、下記までお問い合わせください。

<お問い合わせ>
(株)JTB総合研究所
調査・分析担当:早野、波潟
広報担当:早野・三ツ橋・波潟
03-6722-0759
www.tourism.jp
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