台湾からの旅行者の心理と行動に関する調査研究(3)

2017/03/14

株式会社JTB総合研究所

図16 は、東北の様々な観光地や観光資源について、認知度と訪問意向を聞いた結果です。東北の中で最も知られていたのは「青森」で、6 割以上の認知度を示しました。この結果について、台湾の方々10 数名にヒアリングをしたところ、青森は「りんご」の産地として、台湾では広く知られているようです。2 位以下には仙台、秋田犬、あまちゃん、福島が続きます。

図 17 は「行きたいところ・興味のあるところ」を聞いた結果です。上位の順位は認知度と同様となりました。訪日経験回数別に違いをみると、「秋田犬」「あまちゃん」「わんこそば」などは訪日経験回数 4 回以下の旅行者で認知度が高く、「乳頭温泉」「ねぶた・ねぷた」「樹氷」「弘前城の桜」などは訪日経験回数 5 回以上の旅行者の認知度が高くなりました。訪日経験回数が 4 回以下の旅行者では、比較的、話題性のあるイベント・アトラクション的なものへの興味・関心が高い一方、訪日経験回数が多い旅行者では、魅力的な自然や文化的なものへの興味・関心が高くなる傾向であると言えます。

 

 

 

【旅に関わる普段のライフスタイルや価値観と情報について】

9.台湾からの訪日旅行者がファッションやライフスタイルで参考にしている国は世代を問わず日本がトップ
買い物や外出、旅行の情報源としてSNSから受ける影響が高い(タイ、中国、日本との比較)

台湾からの訪日旅行者がファッションやライフスタイルで参考にしている国を聞いた結果では、全体では60.5%が「日本」と回答し、年齢を問わず「日本」を意識している人が多いことがわかりました。2 位には自国、3 位にフランスが続きますが、自国でも 42.4%と日本とは 20 ポイント近くの差がありました。

旅行やショッピングの情報源としては、友人や家族からの体験談(65.9%)、FacebookなどのSNSの投稿(49.9%)が上位となりました。

SNS で経験したことでは、「SNS の投稿を見て行ってみたいと思った場所に出かけた」が 74.8%と、他国を大きく上回りました。台湾では、SNS が旅の重要なきっかけとなっているようです(別々の調査結果をまとめたグラフのため、他国は参考数値)(図 18~20)。

 

 

 

 

10.海外旅行は「あらかじめ詳しく調べてやり残しがないようにしたい」が 50.5%
経路検索サービスは 48.2%利用経験あり。利用者の 84.5%は自国であらかじめダウンロードして利用

海外旅行の考え方全般について聞いた結果では、「あらかじめ詳しく調べてやり残しがないようにしたい」が50.5%と過半数を超えました。「行き当たりばったりで旅行したい」は 10.5%ですので、旅行は事前に「しっかり調べる」旅行者が多数派であるようです。

経路検索サービスについて聞いてみると、48.2%が経路検索サービスを利用した経験があり、そのうち 84.5% は自分の国でダウンロードしたと回答しています。また利用のきっかけとしては、ブログや SNS、旅行情報サイトなどが上位となりました。「しっかり調べる派」が多いことからも、ネットなどを通じた、旅行出発前の情報提供が重要と言えるのではないでしょうか(図 21~24)。

 

 

 

 

11.  台湾からの旅行者はトレンドに敏感な高アンテナ、共感タイプが多く、「日本の情報を意識して取り入れる」傾向

旅行に関する価値観やライフスタイルで旅行者を5つのタイプに分けた旅ライフセグメント”(TLS5)でみてみると、台湾の旅行者は共感型が 42.8%とタイの 47.0%に次ぐ高い割合となりました。共感型は自分の体験を発信したり、他人の発信を共有したりすることを好むため、「SNS の投稿で行ってみたいと思った場所へ行った」という回答割合が高かった結果も納得できます。高アンテナタイプも 13.6%と高い割合を示しました。共感型は、高アンテナタイプの動きを捉え、その中で良いと思ったことを他者へと共有する傾向が強いことから、高アンテナタイプがどのような動きをしているかが重要となりますが、「普段からファッション・インテリアやライフスタイルに関し、意識して情報を取り入れている国や地域」をタイプ別にみると、高アンテナは圧倒的に

「日本」という回答割合が高くなりました。タイでは、自分の身の回りで話題になっていることが共有される傾向がありましたが、台湾では「日本で話題になっていること」も重要なのでしょう。また、体験重視派は、5 ヶ国の中でも最も多くなりました。体験重視派は自然やお祭り、観光列車やローカル電車、日本式の旅館などへ関心を示す傾向があることから、どちらかというと都市観光より地域観光への志向が強いと考えられます(図 25

~27)。

 

 

 

 

12.  まとめ

●地方空港、域内交通、拠点、観光地を繋いだストーリーづくりが重要に

旅行経験が豊富になるにつれ、日本全国に渡るような広域の大きな移動は減少し、東北、北陸、瀬戸内といった同一エリア内での移動が増えます。このような傾向を考慮し、同一エリア内の点と点を繋ぎ、広い範囲で観光を楽しめるような提案が今後はより重要です。

 

●訪日経験回数豊富な旅行者へ向け、地方での二次交通や夜の時間帯に楽しめることの拡充が求められる

温泉街や商店街などが早い時間に店じまいをしてしまいますが、夜の時間帯に楽しめることへの要望も高いことから、夜間の過ごし方の提案も大切だと考えられます。最近では温泉旅館の飲食施設をカフェやお洒落なお土産ショップにし、宿泊者以外も気軽に入れる空間をつくり、まちの交流や賑わいづくりに一役買う地域もみられます。

 

●若い旅行者が求めることの意義を考える

調査結果から、若い人ほど日本で様々なことをしてみたいと考えており、日本人との交流についても積極的でした。日本の旅行市場は比較的年齢が高い層がけん引していますが、これまでのタイや中国の調査同様に、台湾も若い旅行者が市場をけん引しています。若い旅行者が求める体験や情報源は何かを、商品やサービス、情報を提供する上で意識することが台湾からの旅行者の興味・関心を得るためには有効と考えられます。

 

●ハイエンドな層への訴求にも地域によっては高い可能性

台湾からの旅行者は高アンテナ、共感タイプが多く、他国に比べて価格重視の合理派が少ないこと、ファッションやライフスタイルは日本を参考にしている人が特に高アンテナタイプに多いことがわかりました。また法務省の出入国データで見ると他のアジア諸国より幅広い年齢層に旅行者が広がっていることからハイエンドで洗練された体験(グレードの高い旅館やグランピング、ワイナリーや酒蔵体験など)も地域によってはポテンシャルがあると考えられます。そのためにも、ターゲットを絞った徹底したブランディングが必要と言えます。

 

●観光客により近い現場でのデータの理解と活用が今後さらに重要に

今回、ビッグデータとアンケート調査を掛け合わせた分析を試みました。様々なデータが容易に手に入るようになった今、手持ちのデータをいかにフル活用できるかは成功のための鍵の一つです。しかしながら、平面の展開図から立体の図形を想像することが難しいのと同様に、机上のデータから、実際のお客様の姿を浮き彫りにし、新しいアイディアを導くには、ある程度の訓練が必要です。それは単に数字の読み方を学ぶのではなく、データを日ごろの自分自身のリアルな経験、あるいは社会的事象や技術の変化などと連動させ、旅行者にどのような影響をもたらすのか想像することです。想像の幅を広げるために様々な場でディスカッションを行うことも有効な手段の1つと言えます。観光経営が大きな課題となり、日本版 DMO の登録数が増えている中、今後、産業全体におけるデータの活用は、より顧客に近い現場での重要性が高まると考えられます。これまでは現場での裁量権を増やすことで、顧客への対応をより柔軟にし、満足度の向上が図られてきました。年々社会や市場の変化のスピードが早まる現在においては、それだけではもう変化のスピードにキャッチアップできません。現場自らがデータを駆使し、顧客の動きを予想し、一歩先を行く戦略を立てていかなければならない時代ではないでしょうか。

 

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