台湾からの旅行者の心理と行動に関する調査研究(1)

2017/03/14

株式会社JTB総合研究所

要 約

<直近の日本への旅行から>

アンケート調査対象者(2015年 9月以降に個人旅行で日本を訪問した 20~68歳の台湾の男女)の平均訪日旅行回数は 6.29回。直近の旅行の満足度は高く、94.8%が 2 年以内に再訪意向あり

〇入国⇒出国の空港の組み合わせは「関西⇒関西」22.6%、「成田⇒成田」21.3%。初回の旅行と比べ、「那覇⇒那覇」、「福岡⇒福岡」、「中部⇒中部」が増加、西高東低へシフト。異なる空港の利用は少ない

〇一旅行あたりの宿泊箇所数は 1か所が 40.7%。宿泊はカジュアルなホテル 64.3%、民泊は 10.4%

 

<訪問先の傾向から考える地方への旅行の可能性>

〇首都圏、山梨、関西など大都市部や有名観光地では訪日回数 4回以下の旅行者割合が高く、地方の県では、訪日経験豊富な旅行者(訪日回数5回以上)の割合が高い(GPSデータ)

〇初めての旅行の都市の組み合わせは、①首都圏、関西およびそれらを結ぶゴールデンルート②札幌圏③福岡圏が中心。直近の旅行では①北陸圏②東北圏が加わり、広域移動は減少(特に西日本)

〇過去 1 年間で台湾からの旅行者が増えていた場所は、初訪日では名古屋市、日光市、宇治市、白川村、金沢市訪日 2 回以上の旅行者では、常滑市、湯沢町、吹田市、岡山市、盛岡市など。リピーターはLCCも活用か

〇地方に商機。普段の海外旅行は大都市志向が 64.1%。日本旅行では「田舎を訪れるのが好き」55.8%

 

<日本への旅行で何をしたいか>

〇「桜を見たい(54.1%)」「懐石料理など高級な和食を楽しみたい(54.1%)」「紅葉狩りをしたい(48.4%)」桜、食は大都市志向に多く、 祭り、世界遺産、ローカル列車、観光列車は田舎志向に多い

〇日本人との交流意向は「日本の日常生活に触れたい」44.3%。年齢が若いほど日本の日常生活や、地域の活動への参加に関心。桜は自然風景としてではなく、日本人が楽しむ「花見」体験として人気が高い

地方への旅行でもショッピングは重要事項。訪問回数が増えてもアウトレットへの訪問率は変わらない

 

<旅に関わる普段のライフスタイル>

〇台湾からの訪日旅行者がファッションやライフスタイルで参考にする国・地域は、日本(日本 60.5%、台湾 42.4%)

〇半数が「あらかじめ旅行先について詳しく調べてやり残しがないようにしたい」。経路検索サービスのアプリは台湾でダウンロードが 84.5%。観光振興は旅行前の台湾での情報発信が重要に

 

【はじめに】

株式会社JTB総合研究所(東京都港区 代表取締役社長 野澤肇)と株式会社ナビタイムジャパン(東京都港区 代表取締役社長 大西啓介)は共同調査「台湾からの旅行者の心理と行動に関する調査研究」を実施しました。

 

訪日外国人旅行者は旅行経験を重ねるほどFIT(航空券と宿泊施設を予算や行程に合うように自分で調べ、それぞれ予約、購入する個人旅行)や、航空券と宿泊施設がセットになった自由行動のパッケージツアーの利用が増える傾向があります。

台湾から日本への旅行者については、2004 年には 100 万人を超え、近年急増している中国や東南アジアの国々より早い時期から多くの人が日本旅行を経験してきました。2015 年は人口約 2300 万人に対し、延べ海外旅行者数は 1318 万人、うち日本への旅行者は 368 万人を記録しています(台湾行政院主計総処および日本政府観光局による)。その旅行者の大半がリピーターかつ個人旅行者で、その動きは多種多様と考えられています。実際彼らは日本でどこに行き、どのような行動をしているのでしょうか。行動の背景にはどんな価値観や志向があるのでしょうか。また日本はこれからもポテンシャルの高い旅行先であり得るのでしょうか。いずれ他のアジア諸国の旅行者も旅行経験を重ねるにつれ個人旅行が増加すると考えられます。その変遷を予測し、日本の観光資源をどう活用するか知るためにも、台湾からの旅行者が何を考え、どんな旅行をしているのか知ることは意味がありそうです。

一方、個人の旅行者の動きはアンケート調査だけで詳細に捉えることはできません。本人の意思や自覚と関係ない行動を把握することは難しく、また観光地の数は計り知れず、線や面での旅行者の細い動きを全て聞き出すことは困難です。近年はビッグデータの解析技術が向上し、GPS(位置情報)や POS(販売時点情報管理)、SNSデータなどを活用した生活者の具体的な行動把握が可能となり、今後の活用が期待されます。ただし観光は旅行者の感性や気分によるところも大きく、ビッグデータ単体だけを見ていても表面的な事象に捉われ、「なぜその行動を起こしたのか」「どんな体験価値を求めていたのか」という行動の背景が見えにくく、機能中心の改善策や一時的な他地域の成功事例を追うだけで、本質的な施策を深堀できない一面もありそうです。この課題を解決するべく、株式会社ナビタイムジャパンとの共同研究で、GPS データとアンケート結果を合わせた分析を行い、旅行者の滞在箇所、観光素材の訪問意向、旅行の傾向など、台湾からの旅行者の姿を可視化しました。その一部を紹介します。

 

【調査・分析概要】

■台湾からの旅行者へのアンケート調査

調査手法:インターネットアンケート調査

調査期間:2017 年1 月 11 日(水)~1 月 17 日(火)

対象者:台湾に居住し、2015 年 9 月以降に「個人旅行」で日本を訪れた 20~68 歳の男女 計 800 名

 

■NAVITIME for Japan Travel の利用データ分析

データ:スマートフォン向け経路検索・観光案内アプリ NAVITIME for Japan Travel ダウンロード時のアンケート回答データ、およびユーザーの同意を得て取得した GPS による移動データ

データ抽出期間:2015 年 9 月 1 日~2016 年 8 月 31 日(1年間)

対象者:台湾に居住し、2015 年9 月1 日~2016 年8 月31 日にNAVITIME for Japan Travel を日本国内で利用した訪問者 計10,408 名

 

【アンケート調査の回答者プロフィール】

 

 

【直近の日本旅行】

1.直近の出入国空港は「関西⇒関西」22.6%、「成田⇒成田」21.3%。初めての旅行と比べ西高東低にシフト直近の旅行の宿泊箇所数は 1 か所が 40.7%。民泊の利用は 10.4%に

アンケート回答者の平均訪日旅行回数は、6.29 回。訪日回数 1 回の人は全体の 11.0%でした。台湾からの旅行者の 9 割近くはリピーターであると言えます。年齢別にみると、年齢が高くなるほど訪日旅行回数も上昇し、40 歳以上では、10 回以上日本を訪れている人も 3 割を超えました。

台湾からの旅行者の直近の旅行の総合的な満足度は、「非常に満足」と「満足」を足すと 97.0%となり、ほとんどの人が日本旅行に満足しているようです。また今後 2 年以内の再訪意向も 94.8%と極めて高いことがわかりました。既に訪日経験は豊富な台湾からの旅行者ですが、今後も継続的に日本を訪れてもらえるポテンシャルは十分ありそうです(図 1、2)。

直近の旅行で入国空港と出国空港の組み合わせで最も多かったのは、「関西⇒関西」の 22.6%で、続いて「成田⇒成田(21.3%)」、「羽田⇒羽田(10.9%)」、「那覇⇒那覇(6.1%)」、「福岡⇒福岡(4.5%)」、「中部⇒中部(3.6%)」、「札幌⇒札幌(2.4%)」の順となりました。初回の旅行の際と比較すると、「成田⇒成田」や「札幌⇒札幌」の割合が下がり、「関西⇒関西」、「中部⇒中部」などが増加しており、西高東低にシフトする傾向が見られます。

直近の旅行の宿泊箇所数は全体では1 カ所が 40.7%と最多でした。直近の平均旅行日数が6.13 日であることを考えると、連泊も多いと考えられます。また、初回の旅行と比べ、1 カ所と 2 カ所の割合が増え、3 カ所以上の割合が下がっており、訪日回数を重ねるにつれ、滞在型が多くなりました。

宿泊した施設は、「カジュアルホテル」が最も多く、全体の 64.3%となりました。また、2 番目に割合が高かった「高級ホテル(20.5%)」や 4 番目の「日本 式の旅館(18.5%)」は、訪日回数が増 すにつれ増加する傾向が見られました。民泊については 10.4%と、約1割が直近の旅行で利用しており、これまでの利用経験率は 19.0%となり、さらに割合が高まります(図 3~5)。

 

 

 

 

 

 

【訪問先の傾向から考える地方への旅行の可能性】

2.首都圏、山梨、関西など大都市部や有名観光地は訪日回数 4 回以下の旅行者割合が高く、地方の県では、訪日経験豊富な旅行者(訪日回数5回以上)の割合が高い(GPS データより)

NAVITIME for Japan Travel のGPS データ分析で日本国内の滞在先を見てみると、訪日経験回数 4 回以下の旅行者では、テーマパークや世界遺産など、いわゆる定番の観光地のある、首都圏、関西の都道府県を訪れる割合が高い結果となりました。訪日経験回数 5 回以上の旅行者では、東北や北陸、中部、中国・四国、九州、沖縄など地方の県での割合が高くなりました(表 1) 。

 

 

3.初めての訪日旅行と直近の旅行では訪問先と動き方に変化:首都圏~関西~九州のような広域移動は減少。同一エリア内の滞在へ。東北圏内、北陸圏内が増える

アンケートで、初めての訪日旅行、直近の訪日旅行、直近の 1 回前の訪日旅行で訪れた都市を全て選んでもらい、都市の組み合わせで多いものを図示したのが図 6 です。青い丸の大きさは訪問者数を表し、線の太さは繋がりの強さ(訪問地として同時に訪れている割合が高い)を表します。初めての旅行から直近の一つ前、直近の旅行まで、訪れる都市の組み合わせの変化をみると、以下のような特徴がありました。

1.初めての旅行:①首都圏-関西(ゴールデンルート)/ 首都圏、関西圏
②札幌-函館-旭川ルート
③福岡-長崎ルート

2.直近の1つ前の旅行:1の訪問先に加え、中部、金沢、富山などの組み合わせが増える(昇竜道)。

3.直近の旅行:1,2の訪問先に加え、青森、盛岡、仙台の東北の組み合わせが増える。
北海道は、旭川と函館の繋がりが弱まる(訪日回数1回の人は除いた、2015 年 9 月以降の旅行)。

 

初めての訪日旅行では、東京や大阪を基点として中部や富士山などをるいわゆるゴールデンルート、札幌を基点に函館、旭川を回るルート、福岡を基点に長崎へと足を伸ばすルートの 3 つが中心で、2 回前の旅行では、そこに中部から北陸を回る昇竜道が加わります。直近の旅行では、初回の旅行に見られたような首都圏、関西圏、九州を結ぶ大きな広域の移動は減少しました。特に西日本でその傾向が強く見られます。プロフィールより、訪日回数が増えるにつれ、滞在型の旅行が増える傾向が明らかになったことも一致していますが、滞在型と言っても、大都市部だけではなく、地域にも分散して滞在している様子が見られるのは面白いポイントです。地域別にみると、直近の旅行では北海道や北陸ルートがやや減り、東北ルートが増える傾向が見られました(図 6)。

 

 

<お問合せ>
株式会社JTB 総合研究所 企画調査部
調査分析担当: 早野、波潟
報道関係者からのお問合せ: 早野、三ツ橋、波潟
TEL:03-6722-0759 Email: contact@tourism.jp
URL: www.tourism.jp

株式会社ナビタイムジャパン
インバウンド事業: 藤澤
交通コンサルティング事業: 小竹
TEL:03-3402-0827 Email:consulting-group@navitime.co.jp
URL: http://consulting.navitime.biz/
報道関係者からのお問合せ:
TEL:03-3402-0711 Email:pr_n@navitime.co.jp
ページトップへ