「今シニア」「新シニア」の暮らしとライフスタイル

2017/03/03

株式会社JTB総合研究所

◆◆   要約   ◆◆

【年代別にみる現在の生活や暮らし】

●現在の生活には若い世代より余裕が感じられるが、景気の見通しには悲観的。将来の不安のトップは健康

●近隣の人との関わりは「顔を合わせた時に挨拶する程度」がシニアでも過半数(全体 57.0%、60 歳以上 52.4%)。 70 代女性は「サークルや趣味の活動」、男性は「清掃活動やボランティア活動」での関わりが大きい。

●全年代の 7 割以上は幸せを感じる。60 歳以上は「幸せ」が多い傾向。最も幸せ度が低いのは 50 代

 

【みんなが考えるセカンドライフ(老後)とは】

セカンドライフの開始は「65 歳から」と考える人が最多。次に多いのは「60 歳から」

●今シニアの理想のセカンドライフは「経済的な余裕」「時間に追われずゆったりすごす」「話し相手がいる」

自宅や土地を所有せずに「借りて済ませてもよい」は若い世代に多い。自宅(49 歳以下 44.7%、50~64 歳 29.7%、65 歳以上 22.0%)、土地(49 歳以下 25.2%、50~64 歳 21.0%、65 歳以上 16.0%)

新シニア女性は「一人暮らしを覚悟」。今シニア女性は「自立して一人で暮らしたい」と現実的な課題に
(プロフィールより、70 代一人暮らし割合は男性 8.8%、女性 20.4%)

●女性は日常は一人で、非日常(旅)は誰かと。男性は日常は誰かと、非日常は一人で。

 

【今シニアからみる“幸せシニア”のポイントと“働く”ことの重要性】

●“幸せシニア”を下支えすることは「医食住(健康や暮らし)・行(移動や旅行、学び)・働(仕事・役割)」経済と健康をベースに「人や地域との交わり」「学びの機会」「社会への役割意識」

●「仕事をしたくない」今シニアは 0%。定年退職後も働きたい人が多い。経済的な基盤と社会との接点や役割意識を持つための“働”が重要に

 

【セカンドライフにおける「旅のチカラ」】

●旅行するだけではなく、サービス提供側としてのシニアの可能性に注目。宿泊場所やガイド、料理作りなど、時間や知識のシェアサービスも、“働”の選択肢の一つに。

●普段のお出かけがおっくうにならないための日々の「きっかけ」づくりは旅行寿命の延長に大切。

●セカンドライフの理想の旅行は今シニアと新シニアでは違うことに注意。新シニアは同じ時間をかける旅でも「趣味を深める」「暮らすように楽しむ」ことを思い描きながら、今を過ごす

*「今シニア」:完全退職が広がる 65 歳以上の現役シニア
「新シニア」:シニアへの準備段階である 50~64 歳(日経新シニアライフデザイン研究会では 40~49 歳も含む)

 

【はじめに】

日経新シニアライフデザイン研究会は 2014 年以来、業種業態を超えた企業の参加を得て、これからの社会のさまざまな課題を掘り下げ、新たなビジネスチャンスの開発を目指してきました。今回、シニアの暮らしの意識とライフスタイルを調査することで、あらためて今のシニアを捉え直し、マーケティング活動やビジネス開発に役立て、これからの社会の姿をイメージするための一助としたいと考えました。

 

今回の調査には、日経新シニアライフデザイン研究会、JTB 総合研究所の他に、同研究会のメンバー企業の中から、大和ハウス工業株式会社、株式会社デンソー、クリナップ株式会社、株式会社富士通総研に参画いただき、それぞれの分野の専門的な知見を反映させることができました。

 

セカンドライフの始まりは 65 歳から:今からちょうど 60 年前の 1956 年(昭和 31 年)に 65 歳以上が高齢者と定義されました。その時の平均寿命が 65 歳。この 60 年はすなわち未経験の人生を生きることが大きな課題であったことがわかります。60 年間で多くのことが変わりました。今の 65 歳は 60 年前とはまったく違います。セカンドライフの入り口に立ち、残りの 20 年なり 30 年なりをどのように生きるかを問われています。今回の調査からそのあたりの意識がある程度抽出できたのではないかと考えます。

調査からわかってきたことは、“今シニア”はこれから 20 年、30 年と生きることを念頭に、今後の経済見通しを厳しく持ち、節約するところは節約するが、これはというものには支出も厭わない、人生を楽しむということも考えている、守るべきところはしっかり守り、攻めるときはチャンスを逃さない、理想的なサッカーの試合運びを思わせるような「しっかりシニア」であるということです。また、今シニアの予備軍である 50 代は逆に多くの課題や不安に直面する悩み多き世代であることも浮き彫りになりました。

「新シニア」は 40 歳からを指しています。悩み多き 50 代を踏まえて 60 歳、65 歳で本格的なセカンドライフを送るためにも、40 代から滑走路を設けて準備することが必要だとの考えから生まれたコンセプトです。

 

キーワードは医食住(健康や暮らし)・行(移動や旅行、学び)・働(仕事・役割):その中でも、働き方改革元年と呼ばれる今年に時をあわせ、「働」というキーワードが見えてきました。長く生きるために、経済的な要素は避けて通れませんし、生きる目的として多様な意味で「働」を考える人が多くなってきているのがわかります。

団塊の世代がまさに 70 代に入っていく今年、企業にとっても今までのマーケティング、今までのやり方は大きく変わらなければなりません。課題にしっかり向き合うことで、あらたなビジネスチャンスを掴むために、本調査の結果が役立てば幸いです。

(日経新シニアライフデザイン研究会)

 

【シニアの医食住(健康や暮らし)・行(移動や旅行、学び)・働(仕事・役割)】

シニアの年収や働き方などについては図の通りです。世帯年収は、60 代~70 代の男女の約半数が年収400万円未満、残りの半数は 400 万円以 上で、年金以外の収入源(株などの 財テク、アパート経営などの不労所 得、パートタイム勤務、自営業など) を持っていると考えられます。就業 状況については、60 代男性の 6 割以上はパート・アルバイトなども含め、何らかの形で働いていますが、70代になると2 割程度まで下がります。

一方、女性の 60 代で働いている人は約 3 割、70 代では 1 割強でした。世帯形態は、全体では 2 世代が42.6%と最も多く、夫婦・パートナーのみの 34.0%が続きました。ひとり世帯は全体の 15.0%でした。特に女性の 70 代は 20.4%と 5 人に 1 人はひとり世帯でした。インターネット調査ではありますが、国勢調査など公的なデータとも同じような傾向が見られました(図 1~3)。

現在の住まいについては、男女 共に 60 歳以上で 80%強が「持ち家」と回答しており、生活の基盤となる住まいを有する割合は高いようです(図 4)。

 

 

 

 

 

2. 年代別にみる現在の生活や暮らし

●現在の生活には若い世代と比べ余裕が感じられるが、景気の見通しには悲観的。将来の不安のトップは健康

まず、景気や生活の状況についての意識をみてみます。全体では「節約するが買いたいものは買う(50.7%)」「貯蓄を増やしたい(42.1%)」「生活に余裕がない(31.6%)」が高くなりましたが、60 代女性、70 代男女では「節約するが買いたいものは買っている」が全体より高いとともに、「生活に余裕がない」は全体より低い傾向となり、現在は比較的余裕のある生活を送っている人が多そうです。ただし、「景気の見通しが悪くなった」「株や資産価値の上昇は期待できない」「海外の景気悪化が日本経済に及ぼす影響が心配」などは男女共に年齢が高くなるにつれて上昇する傾向でした。また、「自分の健康」が将来の不安のトップ(全体75.3%)となり、60 代、70 代では8 割以上が自分の健康についての不安を抱えていました。60 代男性と50 代女性は年金への不安も高く、今後の生活や暮らしについては決して楽観的というわけではなさそうです(図5、6)。

 

 

 

●近隣の人との関わりは「顔を合わせた時に挨拶する程度」がシニアでも過半数(全体57.0%、60 歳以上52.4%)男性70 代、女性60 代、70 代で地域との繋がりが高くなる

70 代女性は「サークルや趣味の活動」、男性は「清掃活動やボランティア活動」での関わりが大きい

続いて、地域との繋がりや普段の活動についてみていきます。近隣や地元の人との関わりについては、「顔を合わせた時に挨拶する程度」は全体では57.0%、60 代、70 代でも約半数ありました。70 代男性、60 代、70 代女性では「近隣の居住者とお土産やおすそ分けのやり取り」が最も高くなりました。60 代の男性はまだ仕事をしている人も多いことから、男性は70 代から、女性は60 代から、地域との繋がりが強まる傾向があるようです。また、男女の違いを見てみると、70 代女性は「電話やメールなどでやり取り」「サークルや趣味の会などに参加」の割合が高く、70 代男性よりコミュニケーション中心の繋がりが強い傾向が見られました。一方「地元の清掃活動やボランティア活動などに参加」は70 代男性の割合が70 代女性を上回りました。男性にとって黙々と作業をすることのできる活動の方が、敷居が低いのかもしれません。

普段行っている活動の上位は全体では、「お出かけを兼ねたショッピング(80.5%)」「友人との飲み会や食事(75.9%)」「国内宿泊観光旅行(75.6%)」「日帰り観光旅行(71.1%)」。65 歳以上の男女で共に全体より高くなったのは、「散歩や軽い運動」「園芸やペットの世話」「趣味のサークルや集まり」などでした(図7、8)。

 

 

 

●シニアが健康と感じるのは「お腹が空いた時」。規則正しく、バランスの取れた食事を心がける

将来の不安のトップにあげられた「健康」についての意識はどうでしょうか。健康と感じる時については、全体では「朝の目覚めがスッキリしていたとき」が51.5%で最も高くなりましたが、70 代の男女では、「食欲がありお腹が空いたと感じたとき」や「旅行や外出したい気分になったとき」などが高くなりました。普段の食事についても、60 代男女、70 代男女は「野菜を多くとる」「3食、規則正しく食べる」「遅い時間には食事をとらない」「塩分を控える」などが高く、若い世代に比べて食事にはとても気を使っている様子が伺えます(図9、10)。

 

 

 

3. 全年代の7 割以上は幸せを感じる。60 歳以上は「幸せ」が多い傾向。最も幸せ度が低いのは50代

現在の暮らしについて幸せかどうかを回答してもらった結果を見ると、幸せと感じている人(「幸せ」と「やや幸せ」の合算)は全体で71.6%、全体的に男性より女性の方が「幸せ」と感じている人の割合が高くなりました。若い世代から中年に差し掛かるにしたがって「幸せ」と感じる割合が下がり、男女共に50 代の幸せ度が低いのが注目されます。仕事の忙しさや、役職定年など今後の進路への不安、また、子供の教育費や結婚費用がかさんだり、親の介護に自身の身体の不調などを感じ始めたりと、精神、肉体的にも経済的にも大変な時期なのかもしれません。60 代、70 代になるにつれ、「幸せ」と感じる割合は上昇し、男性70 代は男性全年代の中で最も高く、女性70 代は40 代に次いで2 番目に高くなります(図11)。

 

 

【セカンドライフ(老後)とは? みんなが考えるセカンドライフの姿と理想のくらし】

4. セカンドライフの開始は「65 歳から」と考える人が最多。次に多いのは「60 歳から」

セカンドライフ(老後)と一口に言っても、人それぞれ人生設計の考え方には違いがあり、一概に〇〇歳以降とは言い切れません。多くの人が考える「セカンドライフ(老後)」とは、いつごろのことを指すのか、聞いてみました。その結果、全体では35.7%の回答者が「セカンドライフの始まりは“65 歳から”」としました。

次に多かったのは、60 歳の29.0%でした。年代別にみると、40 代までの若い層は60 歳という回答が多く、70 代になると、70 歳という回答も多くなりましたが、総じて完全リタイヤを迎える65 歳をセカンドライフ(老後)の始まりと考える人が多いようです(図12)。

 

 

5. 今シニアの理想のセカンドライフは「経済的な余裕」「時間に追われずゆったりすごす」「話相手がいる」

次に理想とするセカンドライフについて、最も多くの人がセカンドライフ開始と考えている「65 歳以上」と、セカンドライフの準備期間となる「50~64 歳」、それ以前の「49 歳以下」と、回答者を3 つの年代に分け、それぞれの考え方を比較しました。結果は全年代で「経済的な余裕がある(77.3%)」「時間に追われずゆったり過ごす(60.9%)」「多彩な趣味を楽しんでいる(59.7%)」が上位となりました。しかしながら、経済的な余裕を前提とすれば、すでにセカンドライフを送っている65 歳以上で特徴的に高い項目は「時間に追われずゆったりすごす(65.6%、全体60.9%)」「話し相手がいる(64.6%、全体58.6%)」が重要なことがわかります。他に、年齢を重ねるほど高くなる項目としては、「いつまでも若々しく見られる(47.3%、全体44.0%)、「交友関係が広い(36.3%、全体30.3%)」「世の中に貢献できる自分の役割がある(32.6%、全体27.9%)」「地域活動を行っている(27.2%、全体21.1%)」でした。シニアにとって、人や地域とのつながりや役割意識などが理想のセカンドライフに重要であることが伺えます(図13)。

 

 

続いて、「生きがい」をみると、全体では、「家族の役に立つこと(41.5%)」「健康を向上させること(40.1%)」「初めての場所で新しい風景や地域の文化・暮らしに触れること(35.7%)」などが高くなりました。65 歳以上では、「健康を向上させること(55.2%、全体40.1%)」が最も高くなりました。様々な調査でシニアが望むこととして、常に旅行やお出かけに関することは上位に上がりますが、「健康」はそういった、自分がしたいことを実現するための基盤として大変重要であることがわかります(図14)。

 

 

6. 自宅や土地を所有せずに「借りて済ませてもよい」は若い世代に多い。自宅(49 歳以下44.7%、50~64 歳29.7%、65 歳以上22.0%)、土地(49 歳以下25.2%、50~64 歳21.0%、65 歳以上16.0%)

では、セカンドライフではどんな場所に居を構えたいと考えているのでしょうか。全体では57.9%が「現在住んでいる場所」としました。今シニアである65 歳以上男性の70.6%、女性の75.6%が「現在住んでいる場所」でした。女性は現在の居住場所1 か所を拠点としたいと考えている人が多いのに対し、男性は現在の住まいを拠点としつつも、他の場所に居住することを念頭に置いている人が多いようです(図15)。他の場所に居住希望のある人に具体的にどんな場所に住みたいのかを聞いた結果では、全体で「気候や自然環境の良い所(49.8%)」「交通機関や買い物が便利なところ(33.3%)」「治安や人間関係など安心できるところ(27.6%)」が上位となりました。65 歳以上が全体と比べて高い割合を示したのは、「気候や自然環境の良いところ(58.6%)」「趣味の活動ができる場所(30.1%)」「福祉関係が充実している場所(24.5%)」「子供の近く(19.7%)」「歴史や文化のある場所(14.5%)」などでした。

 

 

一方、次世代シニアの50~64 歳が比較的高かったのは、「交通機関や買い物に便利な場所」「物価が安い場所」「活気やにぎわいのある場所」など、合理的な生活が送れるような場所となり、65 歳以上とは違う傾向でした(図16)。

 

 

近年では新しい経済の形として個人が持つリソースを使わない時に他人と共有するシェアリングエコノミーが広がっています(図17)。「所有せずに借りてすませてもよいと思うもの」について聞いた結果では、若い年代ほど、「自宅」や「土地」を借りて済ませてもよいと思う割合が高くなりました。家や土地、大型の耐久消費財などを保有するのではなく、合理的に借りて済ませる人が今後増えれば、生涯における消費のあり方も変化する可能性があると考えられます。以上の考え方の違いが年齢による違いなのか、世代による違いなのかは、今後継続的に調査をしていく必要がありそうです。

 

 

7. 新シニア女性は「一人暮らしを覚悟」。今シニア女性は「自立して一人で暮らしたい」と現実的。
女性は日常は一人、非日常(旅行)は誰かと共に。男性は日常は誰かと、非日常は一人で。

一人暮らしについて聞いた結果では、女性は「自立して一人で暮らしたい」が多いのに対して、男性は「一人よりも家族で暮らしたい」が多く、大きく男女で違いが見られました。50~64 歳の新シニアに関しても、女性では一人暮らしの覚悟が必要と考えている人が41.0%でしたが、男性は21.4%と半分程度に留まりました。一人で食事をする頻度についても一人暮らし同様に女性の方が高い傾向がみられ、65 歳以上女性の24.3%が「ほぼ毎日」と回答しましたが、男性の65 歳以上では9.0%でした。また、女性では、今後一人で食事をすることについて、「このままでよい」と考えている人が9 割近いことも特筆すべきポイントです。シニア女性は、普段の生活は一人で送ることを、ある程度想定あるいは前提としている人が多いと考えられます(図18~20)。一方、非日常である「旅行」については、男性65 歳以上は「目的がはっきりした旅は一人で」が41.8%、「マイペースで旅したい時は一人で」が35.5%と、それぞれ女性65 歳以上の26.8%、25.8%を大きく上回りました(図21)。男性は日常では誰かと過ごしたい気持ちが強く、非日常では一人になりたいのに対し、女性は日常では一人、非日常では誰かと過ごしたいと考える人が多いようです。

 

 

 

 

 

【「今シニア」からみる“幸せシニア”のポイントと“働く”ことの重要性】

第二章で現在の幸せ度を見てみたところ、シニア世代は全体的に他の世代と比べ、幸せ度が高いことがわかりましたが、その中でも幸せと感じている人たちの傾向から、幸せなセカンドライフを送るためのヒントが得られないでしょうか。多くの人がセカンドライフの開始と考える“65 歳以上”の回答者のうち、「幸せ~やや幸せ」と感じている人(以下、幸せシニア)と、「どちらでもない~不幸せ」と感じている人との違いをみていきます。

 

8. “幸せシニア”を下支えすることは医食住(健康や暮らし)・行(移動や旅行、学び)・働(仕事・役割)経済と健康をベースに「人や地域との交わり」「学びの機会」「社会や若い世代へのサポート」

近隣や地元の人との関わりについては、全体では 57.0%の人が「顔を合わせた時に挨拶をする程度」でしたが、65 歳以上の幸せシニアでも「顔を合わせた時に挨拶をする程度」が半数いましたが、「お土産やおすそ分けのやり取り」をする人もほぼ同数しました。また、幸せシニアは「散歩などで定期的に会う人たちと雑談」や「地元の清掃やボランティアに参加」「地元のサークルや趣味の会に参加」が高い傾向が見られました(図 22)。

生きがいについては、「健康を向上させること」が最も高いものの、幸せシニアとそうでないシニアとの違いは大きくありませんでした。幸せシニアの方がそうでないシニアより高い項目としては、「家族の役に立つこと」「初めての場所で新しい風景や地域の文化・暮らしに触れること」「自分の夢や目標を達成すること」「他者とのコミュニケーションを楽しむこと」など、人や地域とのつながりに関わることが上位となりました(図 23)。

続いて、理想のセカンドライフをみると、全体としては「経済的な余裕がある」が最も高くなりました。経済的な下支えはやはり重要な要素と言えます。また「話し相手がいる」「世の中に貢献できる自分の役割がある」「地域活動を行っている」などは、全体より幸せシニアの方が高い傾向となりました(図 24)。理想のセカンドライフにおいても、幸せシニアであるためには経済的な安定を基盤に、「人や地域との交わり」「学びの機会」「社会や若い世代へのサポート」を持つことが重要なポイントと言えそうです。

 

 

 

 

9. 「仕事をしたくない」今シニアは 11.0%。定年退職後も働きたい人が多い。経済的な基盤と社会との接点や役割意識を持つための“働”が重要に

次に定年退職後の働き方について聞きました。「仕事はしたくない」と考えている 65 歳以上の今シニアは11.0%で、残りの 89.0%の人は何らかの形で働く意思を持っています。また今シニアは、定年後も生活のためと言うよりも、「社会との接点を持つこと」のために、仕事をしたいと考えています。一方、50~64 歳の新シニアは、「生活費や年金の補填のため」の割合が高くなりました。また、好きなことをする費用を得るためや、趣味や特技を追求するためなど、自らがやりたいことを続けるためにも仕事をしたいと考えています。4 割以上が副業にも関心を持っているようです(図 25、26)。

愛媛県、観音寺の商店街は商店主の高齢化により、店じまいをする店舗が多く、シャッター街となっていました。しかし、店の一部を若い世代に安価に場貸しする仕組みを作ったことで、シニア世代と若い世代の交流も生まれ、町の活性化に繋がりました。必ずしも経済的な利益のためではなく、世代やジェンダー、地域を超えたつながりを生むために時間や空間を「シェア」するという考え方が、今後の高齢化社会の課題解決にとって重要となるのではないでしょうか。また、従来の働き方だけではなく、交流に重点を置いた、よりフレキシブルな働き方など、定年退職を迎える前の段階から、セカンドライフの基盤や生きがいの源泉となる「働き方」を考え、準備しておくことも幸せシニアとなるためのポイントと考えられます。

 

 

 

【セカンドライフにおける「旅のチカラ」】

●旅行するだけではなく、サービス提供側としてのシニアの可能性に注目。宿泊場所やガイド、料理作りなど、時間や知識のシェアサービスも、“働”の選択肢の一つに。

旅行者としてではなく、旅行者へ「サービスを提供する側」としての意識を聞いたところ、シニアの回答が全体を上回ったものは「地元の歴史や文化を伝えたい(65 歳以上 41.1%、全体 37.0%)」「地元に伝わる生活の知恵などを伝えたい(65 歳以上 33.4%、全体 31.3%)」でした。旅行者との関わりは、経済的なものだけではな く、幸せと感じるための人との繋がりも生むことが予想されます。また、サービスを提供したい相手として、訪日外国人旅行者への抵抗も比較的低いことがわかりました。訪日旅行者自身も JTB 総合研究所の過去の調査結果から、地域の人々との交流を望んでいることから、シニアのプチワークの選択肢の一つとして、今後増加が見込まれる訪日外国人旅行者も含め、旅行者へ歴史や文化を伝えるサービスに可能性がありそうです(図 27、28)。

 

 

●普段のお出かけがおっくうにならないための日々の「きっかけ」づくりは旅行寿命の延長に大切。

自分がサービスを受ける側としてあったらよいと思うものとして、全体で高かったのは「予約不要で好きな時に参加できるアクティビティ(63.8%)」でしたが、シニアが全体を上回ったのは、「旅行に詳しい人が気軽に旅行計画の立て方を教えてくれるサービス(65 歳以上54.8%、全体53.0%)、「旅行の計画を立て、一緒にでかけるサークルや集まり(65 歳以上41.2%、全体39.2%)」でした。

過去の調査結果より、50 歳ごろから徐々に旅行の計画がおっくうになり始め、最終的に旅行頻度が下がってしまうことがわかっています。今回の調査結果をみても、「旅行の計画段階」のサポートサービスを提供することが、より長く旅行を楽しんでいただくために有効と言えるのではないでしょうか。

 

 

●セカンドライフの理想の旅行は今シニアと新シニアでは違うことに注意。新シニアは同じ時間をかける旅でも「趣味を深める」「暮らすように楽しむ」ことを思い描きながら、今を過ごす

セカンドライフにおける理想の旅行を聞いたところ、今シニアと新シニアでは、理想の旅行とするものに違いが見られました。今シニアは「ローカル線の旅」や「行き当たりばったりの旅」「クルーズ」など、移動自体のプロセスを楽しみたいと考えているようです。また「買い物や観光」にも比較的関心が高い傾向が見られました。

一方、新シニアは「自分の趣味を深める旅行」「暮らすように楽しむ旅」など、旅行先でも自分の興味関心やペースを大切にしたいといった意識が垣間見られました(図30)

 

 

11. まとめ

これまで、シニアへの旅行サービスはユニバーサルデザインやバリアフリーツーリズムなど、旅へ出かける人ができるだけ不便なく旅行ができるようなサポートが中心でした。それは大変重要なことであり、今後も継続した取り組みが必要だと考えられます。

しかしながら今後は、そういった取り組みに加え、家に引きこもりがちになってしまうシニアに対し、いかに外出する気持を誘発することができるか、おでかけの楽しみを味わえる環境づくりのための、“旅マエ”サポートの重要性も忘れてはなりません。

普段の生活において、「生きがい」や「役割意識」を持つことで心身共に健康に、旅行へ出かけられるベースを作ることも不可欠です。

今回の調査結果の中で、シニアが旅行者に対し、地域の歴史や文化を伝えたり、料理を一緒に作ったりなど、サービスを提供する側になることにも可能性が感じられました。シニアの知識や得意分野を活用した“働”環境を提供していくことも旅へ出かける環境づくりの一歩ではないでしょうか。

 

【調査概要】

調査方法:インターネットアンケート調査

調査対象:日本全国に住む18 歳から79 歳までの男女2,472 名
過去1年以内に1回以上、旅行(国内外問わず、日帰り含む。ビジネス旅行は除く)経験あり

調査期間:2016 年10 月25 日~11 月10 日

 

<お問い合わせ>
(株)JTB総合研究所 調査分析担当:早野陽子
(広報担当 早野・三ツ橋・波潟)
03-6722-0759 www.tourism.jp
ページトップへ